長期の低炭水化物ダイエットは2型糖尿病患者の脂質管理で有効である可能性 京都府立医科大学

2024.08.21
長期間の低炭水化物食は2型糖尿病患者の脂質管理に有効

 2型糖尿病患者が低炭水化物食(LCD)を長期間継続した場合、血清脂質の管理という点において有効性を期待できることが、システマティックレビューとメタ解析によって明らかになった。ただし、HbA1cについては対照群と有意差が認められないという。

 京都府立医科大学の市川貴博氏らの研究によるもので、結果の詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に7月24日掲載された。

 炭水化物は血糖コントロールに影響を与える主要な栄養素として認識されており、その摂取量を抑えるLCDが、食事療法の一つの方法として行われている。短期間のLCDがHbA1cの低下に有効であることが複数の研究で示されているが、LCDの定義や介入期間によって有効性が異なる可能性があり、とくに12ヵ月を超える長期LCDのエビデンスは不足している。

 この研究では、PubMed、Embase、Cochrane Databaseに2023年6月までに収載された論文を対象として、成人2型糖尿病患者に対し12ヵ月を超える長期LCD介入を行ったランダム化比較試験を検索。ヒットした1,484報から重複削除後の1,080報を、論文タイトルと要約に基づきスクリーニングして36報に絞り込み、全文精査を経て最終的に6件の研究報告を抽出してメタ解析を施行した。

 各研究の参加者は52~115人の範囲で合計524人だった。比較対照群は、3件では低脂肪食が設定されており、そのほかの3件の研究は、米国糖尿病協会(ADA)が推奨する標準的なカロリー制限食、従来から行われている糖尿病食、および高炭水化物・タンパク制限食を設定し介入を行っていた。

 メタ解析の結果、長期LCDは、HbA1c[標準化平均差〔SMD〕-0.11〔95%信頼区間-0.33~0.11〕]に有意な影響を及ぼしていなかった。

 また、体重[SMD0.06〔-0.20~0.31〕]、収縮期血圧[SMD-0.15〔-0.44~0.13〕]、拡張期血圧[SMD-0.18〔-0.41~0.05〕]、LDL-C[SMD0.03〔-0.15~0.21〕]に対する影響も、対照群と有意差が認められなかった。

 その一方、長期LCDはHDL-Cの上昇[SMD0.22〔0.04~0.41〕]、トリグリセライドの低下[SMD-0.19〔-0.37~-0.02〕]と関連しており、脂質異常症に対して有効な可能性が示された。

 著者らは、「長期LCDは、2型糖尿病にともなう脂質異常症の管理において、重要なアプローチとなる可能性がある。ただし、今回の研究では、長期LCDはHbA1cの低下という点において、対照群よりも有効とは言えないことが示された」と述べている。

 なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

[HealthDay News 2024年8月2日]

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