心電図データで糖尿病を95%以上の精度で判定 非侵襲で糖代謝機能を予測
2型糖尿病および前糖尿病は早期発見・介入が重要。ただし、有病率の高い疾患・状態であるため、そのスクリーニング法は簡便かつ非侵襲であることが理想とされる。しかし現状では、糖代謝機能の判定には採血の必要なHbA1cの測定や、より正確な判定には経口ブドウ糖負荷試験が必要とされる。
一方、近年、糖代謝異常発現の初期から心電図所見に変化がみられることが報告されている。心電図検査は非侵襲であることから、そのデータを詳細に解析することで糖代謝機能を判定できるのであれば、大規模なスクリーニングへの応用も可能。そこで研究グループでは、機械学習を用いて心電図データから糖代謝機能を判定するアルゴリズムの構築を試みた。
この研究には、インド中部に居住するシンド人を対象とする糖尿病研究の参加者1,462人から、心電図所見や糖代謝関連情報の欠落している人を除外した1,262人のデータを用いた。全部で1万461件の12誘導心電図の波形が記録されており、このうち8,892件をアルゴリズム構築のための機械学習に利用し、523件は構築されたアルゴリズムの検証に充て、最終的なモデルを残りの1,046件の独立したデータセットで検証した。
研究対象の1,262人は、平均年齢47.54±13.15歳、女性61.81%であり、米国糖尿病学会(ADA)の基準で診断した2型糖尿病が29.95%、前糖尿病が13.47%含まれていた。機械学習はスムーズに行われ、エポック(学習回数)40以内にアルゴリズムが構築された。
独立したデータセットでの検証では、精度(疫学研究における陽性的中率)97.11%、再現率(疫学研究における感度)96.15%、正確度96.75%で、F1スコアは96.61%と計算された。なお、糖代謝機能の判定に強く寄与していたのは、第III誘導、aVL誘導、およびV4、V5、V6誘導の波形だった。
著者らは、「われわれの研究結果から、糖尿病や前糖尿病を早期かつ効率よく検出するためのスクリーニングに心電図検査のデータを用いることは、理論的には可能であることが示された。低コストかつ非侵襲的に糖代謝機能を正確に判定しようとする際に、現行法の代替手段となり得るのではないか」と述べている。ただし、「このアルゴリズムを臨床に用いるには、他の独立した集団のデータセットを利用した検証が必要」とも付け加えている。
なお、著者のうち1人はInnotomy Consulting社の社員であり、他の2人は米国の生物医学関連データ分析企業であるM&H Research社に勤務している。
[HealthDay News 2022年8月10日]
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