災害と新型コロナにより糖尿病・脂質異常症・高血圧などが増加 福島県と全国のレセプトデータを解析 大阪大学
災害とコロナ禍により糖尿病・脂質異常症・高血圧などが増加 全国にも影響
大阪大学は、福島災害やコロナ禍の後に、糖尿病、脂質異常症、高血圧、精神疾患の有病率が増加したことを明らかにした。
福島災害とコロナ禍の後では、日本全体でもこれらの疾病の有病率が増加しており、福島災害では女性の40~74歳で、コロナ禍後では男性の0~39歳で、それぞれ疾病がとくに増加したとしている。
研究グループは今回、JMDCから提供をうけた2009年1月~2020年12月の全国のレセプトデータを解析し、福島災害やコロナ禍の前後での糖尿病、脂質異常症、高血圧症、精神疾患の有病率の変化を評価した。
その結果、福島災害後9年間にわたり、糖尿病、脂質異常症、高血圧症の有病率は、福島県全域で増加し、精神疾患の有病率は、福島県浜通り地域で増加したことが明らかになった。
福島県全域の2011年~2013年の有病率の、全国と比較した比率は、糖尿病は1.212(95%不確定区間 1.082~1.344)、脂質異常症は1.053(同 0.980~1.132)、高血圧は1.133(同 1.081~1.188)、精神疾患は1.084(0.961~1.212)だった。
その後の疾患の有病率は、糖尿病は2014年~2016年に1.312(95%不確定区間 1.260~1.364)、2017年~2019年に1.286 (同 1.236~1.338)、脂質異常症は2014年~2016年に1.212(同 1.136~1.295)、2017年~2019年に1.203(同 1.113~1.298)、高血圧は2014年~2016年に1.151(同 1.107~1.197)、2017年~2019年に1.118(同 1.080~1.158)にそれぞれ上昇した。
(b) 新型コロナ禍後の各疾病の有病率の変化 (全国)
誤差線は95%不確定区間をあらわす
また、コロナ禍後では、日本全体でもこれらの疾病の有病率が増加しており、顕著な有病率の増加が生じた性別年齢階層は、福島災害では女性の40~74歳で、コロナ禍後では男性の0~39歳であり、福島災害とコロナ禍で影響の生じた性別・年齢階層が異なることも分かった。
災害やパンデミックの特性に応じた健康支援が必要
研究は、大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授らによるもの。研究成果は、「International Journal of Disaster Risk Reduction」に掲載された。
「これまでも、福島災害やコロナ禍後に心身の影響が生じることが知られていましたが、今回は長期間にわたる同一のデータセットを用いて福島災害とコロナ禍前後でのこれらの疾病の有病率の変化を解析しました」と、研究グループでは述べている。
「その結果、福島災害後9年間にわたって、高血圧症、脂質異常症、糖尿病の有病率が福島県全域で増加していたこと、精神疾患の有病率が福島県浜通り地域で増加していたことが分かりました」。
「一方、コロナ禍後では、日本全体でこれらの疾病の有病率が増加していました。とくに、福島災害では女性の40~74歳でこれらの疾病の有病率の増加が顕著だったのに対し、コロナ禍後では、男性の0~39歳で特に増加しており、影響の生じた性別・年齢階層が異なることが明らかになりました」としている。
これらの知見は、災害やパンデミック後で、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、精神疾患といった二次的健康影響も考慮する必要があること、さらには、こうした影響が生じやすい性別・年齢階層が災害やパンデミックによって異なることから、災害やパンデミックの特性に応じて健康支援を行うことが重要であることを示しているとしている。