非糖尿病者では「高炭水化物+低脂質」の食事は身体活動の増加によるHbA1cの低下がより顕著 J-MICC研究
炭水化物・脂質・タンパク質の摂取状況によって異なるHbA1cに対する影響を検証
日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究、主任研究者:松尾恵太郎・愛知県がんセンター研究所がん予防研究分野長/名古屋大学大学院医学研究院連携教授)は、2005年から14地区で継続されている前向きコーホート研究で、10万人以上を20年にわたり追跡し、がんなどの生活習慣病の原因を調査している。
2型糖尿病の予防と治療には、健康的な食事や身体活動を組み合わせて行うことが推奨されているが、糖尿病予防での、食事と運動のそれぞれの種類や量に関する知見は一致しておらず、食事と運動がどのように影響し合うのかは明らかにされていない。
そこで研究グループは、血糖コントロール指標となっているHbA1cに対する運動や身体活動の影響が、主要栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)の摂取状況によって異なるのかを検証した。
今回の研究では、J-MICC研究に参加した非糖尿病の一般住民5万5,084人を対象に分析を行い、HbA1cに対する身体活動の効果は、食事で摂取している炭水化物や脂質の割合によって異なることを明らかにした。
「高炭水化物+低脂質」の食事は身体活動の増加によるHbA1cの低下がより顕著
その結果、「高炭水化物+低脂質」の摂取者は、「低炭水化物+高脂質」の摂取者に比べて、身体活動が増えることによるHbA1cが下がる効果がより顕著だった。
この結果は、質問紙によって調べられた一時点での主観的な身体活動にもとづくものだが、活動量計を使って客観的に身体活動を測定した6,881人を5年間追跡したJ-MICC研究のサブコホート調査でも、同様の結果が認められたという。
非糖尿病では「高炭水化物+低脂質」は「低炭水化物+高脂質」に比べ、
身体活動が増えることによるHbA1c低下の効果がより顕著
「健康な日本人が糖尿病を予防するという観点においては、脂質よりも炭水化物の割合が比較的多い食事のほうが、身体活動の効果が出やすい可能性があると考えられます」と、研究グループでは述べている。
ただしこの結果は、すでに糖尿病をもっている人には当てはまらなかった。また、「炭水化物や脂質の割合を変えるために食事量(エネルギー摂取量)そのものが増えてしまうと、血糖値を上げることになってしまう危険性もあるので注意が必要です」と指摘している。
空腹時血糖値が関連
J-MICC STUDY 日本多施設共同コーホート研究(ジェイミック スタディ)
Effect of the interaction between physical activity and estimated macronutrient intake on HbA1c: population-based cross-sectional and longitudinal studies (BMJ Open Diabetes Research & Care 2022年1月3日)
Associations of metabolic syndrome and metabolically unhealthy obesity with cancer mortality: The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) study (PLOS ONE 2022年7月8日)