天然ミネラルのゼオライトが高血糖・高脂血症・肥満を改善 食後の血糖上昇とインスリン分泌を抑制 食物繊維のような機能性が

2021.11.24
 岐阜大学などは、富山県産の天然ゼオライトが肥満モデルマウスの高血糖・高脂血症・肥満を改善することを発見したと発表した。

 ゼオライト摂取量に依存して、経口ブドウ糖負荷試験では、食後血糖上昇が抑制され、インスリン分泌も同様に抑制されたことを確認した。中性脂質、総コレステロールおよび非HDLコレステロール/HDLコレステロール比、空腹時血糖も減少した。

 ゼオライトは、地殻中に豊富に含まれるミネラルで、工業ではイオン交換剤や触媒、農業では土壌改良剤、公衆衛生では水質浄化剤などに活用されている。消化管から吸収されないことから、食物繊維のような機能性成分としてその応用が期待されるとしている。

ゼオライトには食物繊維のような機能性がある

 地殻中に豊富に含まれる天然ミネラルであるゼオライトは、イオン交換特性をもつアルミノケイ酸塩で、構造空孔の微細なネットワークをもち、共通の酸素原子を通して連結している。それらは、選択的に水を吸着して、カチオンを交換する。

 こうした機能特性を利用して、工業ではイオン交換剤や触媒、農業では土壌改良剤、公衆衛生では水質浄化剤、環境保全で資材など、さまざまな用途に活用されている。

 これまでに知られている天然ゼオライトは安価で、毒性を示さず、環境汚染を引き起こさないことが報告されている。ゼオライトは、そのよく知られた吸着特性によって整腸作用や有害物質の吸着排出効果などが期待されることから、家畜の飼料添加剤としても活用されている。

 消化管から吸収されないので、食物繊維のような機能性食品成分として、過剰な糖質や脂質の吸収を抑制し、ひいては肥満などを予防することにもつながると期待される。しかし2型糖尿病などの生活習慣病の予防の観点からの研究報告はこれまでなかった。

 岐阜大学などの研究グループは、生活習慣病予防を目的とした食品の開発への応用を目的として、最初に、天然ゼオライトの安全性について検討し(急性経口毒性試験)、次に高脂肪飼料摂取にともなう肥満・2型糖尿病に対する天然ゼオライトの有効性について検討した(長期摂取試験)。

ブドウ糖投与後の食後血糖ピークとインスリン分泌量が低下
空腹時血糖値も低下

 研究では、富山県八尾層群の火成岩由来のゼオライト(平均粒径約100µm)を使用。

 急性経口毒性試験で、ゼオライト2,000mg/20mL/kg体重(比較する対照群へは生理食塩水20mL/kg体重)の投与量を単回経口投与し、14日間の観察、および、観察終了後に全ての動物の剖検を実施した。その結果、使用された動物のいずれも異常および死亡が観察されず、ゼオライト摂取群と対照群の体重にも差が認められなかった。

 高脂肪飼料(30kcal%脂肪)を用いた長期摂取試験(18週間)で、飼料摂取量、摂取エネルギー量、飲水量および初体重には差がないにも関わらず、体重増加量は、ゼオライト摂取量依存的に抑制され、ゼオライト0%群に比べてゼオライト10%群で有意に抑制された(変曲点は10週目)。

 このとき、肝臓、精巣上体脂肪(内臓脂肪)および腎周囲脂肪(内臓脂肪)の重量は、ゼオライト摂取量依存的に低下し、前二者はゼオライト0%群に比べてゼオライト10%群で有意に低下した。

 長期摂取試験の12週目に実施した経口ブドウ糖負荷試験で、空腹時の血糖値とインスリン濃度、および、ブドウ糖投与後の食後血糖ピークとインスリン分泌量が、ゼオライト摂取量依存的に抑制され、ゼオライト10%群はゼオライト0%群に比較して、すべての測定点で有意に低下した。

出典:岐阜大学、2021年

 血漿の中性脂質と総コレステロール、および、非HDLコレステロール/HDLコレステロール比もゼオライト摂取量依存的に低下した。

 研究は、岐阜大学教育学部家政教育講座の久保和弘教授と、美健産業が共同で行ったもの。研究成果は、「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」にオンライン掲載された。

 「ゼオライトの有効性は、食物繊維がもつ消化管吸収の調節作用に似ていると考えられます。今後、高脂肪食にともなう高血糖・高脂血症・肥満を予防することを目的とした機能性食品への応用が期待されます」と、研究者は述べている。

岐阜大学教育学部家政教育講座
Zeolite Improves High-Fat Diet-Induced Hyperglycemia, Hyperlipidemia and Obesity in Mice(Journal of Nutritional Science and Vitaminology 2021年11月6日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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