日本人の食事を全国調査 不足していたり過剰に摂取している栄養素が明らかに 4450人を調査
日本人は多くの栄養素が不足・過剰している
東京大学は、1~79歳の日本人4,450人を対象に、全国規模の秤量食事記録調査を行ない、多くの栄養素の摂取量が不適切(不足・過剰の状態)であることを明らかにした。
日本人の大規模集団で、習慣的な栄養素摂取量を算出し評価したはじめての研究で、栄養摂取状況を改善するための政策や介入の計画・立案に役立つとしている。
食事摂取量は日々、あるいは季節によって大きく変動するため、栄養素摂取量を評価する際には、複数日の食事調査にもとづく個々人の習慣的摂取量を用いる必要がある。
そこで研究グループは今回の研究で、日本人の習慣的な栄養素摂取量を算出し、摂取量が適切であるか評価するため、MSM(マルチソースメソッド)という統計手法を用いて、28種類の栄養素について個々人の習慣的摂取量を算出した。
32都道府県に住む1~79歳の日本人4,450人を対象に、各季節に2日ずつ、合計8日間の秤量食事記録調査を実施。さらに、それらの値を、日本人の食事摂取基準2020年版の各指標と比較して、各種栄養素の摂取量が不足あるいは過剰である者の割合を調べた。
これまで、日本では国民健康・栄養調査が行われているが、この調査で得られるのは1日のみの世帯レベルでの食事データであり、ほかに小規模な研究もあるものの、対象集団の特性や居住地、季節が限定されているため、日本人の習慣的な栄養素摂取量はほとんど明らかになっていなかった。
タンパク質・食物繊維・カリウム・カルシウムが不足している人が多い 食塩や飽和脂肪酸のとりすぎも
その結果、ほとんどの栄養素ついて、習慣的な摂取量が推定平均必要量を下回っている人が、一定の割合でいることが分かった。主な結果は次の通り――。
- カルシウムの摂取量が推定平均必要量を下回っている人の割合は、すべての性・年齢層で高い(29~88%)。
- 鉄の摂取量は、12~64歳の女性で不足している人の割合が高い(79~95%)。
- 目標量については、タンパク質、食物繊維、カリウムで、習慣的摂取量が目標量の下限値を下回っている人が一定の割合でいる。
- すべての性・年齢層の20%以上で、総脂肪と飽和脂肪酸の摂取量が目標量の上限値を超えている。
- 88%以上の人が、ナトリウム(食塩)の摂取量が目標量の上限値を超えている。
超加工食品の摂取量が多い人ほど食事の質が低い
研究は、東京大学大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学講座の篠崎奈々特任助教、同研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、佐々木敏東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。
「本研究は、日本人の大規模集団で習慣的な栄養素摂取量を算出し、適切であるかどうかを評価した世界ではじめてのものです。研究成果は、日本人の栄養素摂取状況を改善するための公衆栄養政策を決定するうえで重要な資料になると考えられます」と、研究者は述べている。
研究グループは、日本人成人の超加工食品の摂取量と食事の質との関連についての調査結果も、2023年に発表している。
日本人の超加工食品からのエネルギー摂取量は、1日の総エネルギー摂取量の3~5割程度を占めており、超加工食品からのエネルギー摂取量が多い人ほど、食事の質が低いことなどが示されている。
東京大学大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学講座
Usual Nutrient Intake Distribution and Prevalence of Nutrient Intake Inadequacy among Japanese Children and Adults: A Nationwide Study Based on 8-Day Dietary Records (Nutrients 2023年12月14日)
Consumption of highly processed foods in relation to overall diet quality among Japanese adults: a nationwide study (Public Health Nutrition April 2023年4月24日)