減量による前糖尿病の寛解は2型糖尿病のリスク低下につながる

2023.11.08
 前糖尿病から減量によって正常耐糖能に寛解すると、その後の2年間の2型糖尿病発症リスクが有意に低下するとする研究結果が報告された。テュービンゲン大学(ドイツ)のArvid Sandforth氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」11月号に掲載された。

 この研究は、前糖尿病状態に対する生活習慣介入の影響を検討した、「Prediabetes Lifestyle Intervention Study(PLIS)」、および「Diabetes Prevention Program(DPP) study」という、2件の大規模臨床試験のデータを用いて行われた。PLISは2012年3月~2016年8月に、ドイツの8ヵ所の医療機関が参加して行われた多施設共同無作為化試験であり、DPPは1996年7月~1999年5月に、米国の23ヵ所の医療機関が参加して、生活習慣改善指導またはメトホルミンによる介入効果を検証した臨床試験。

 各試験の参加者のうち、生活習慣介入群またはプラセボ群に割り当てられ、かつ介入期間中に体重がベースラインから5%以上低下していた参加者を解析対象とした。前糖尿病の寛解は、12ヵ月間の介入によって空腹時血糖値が100mg/dL未満、糖負荷後血糖値140mg/dL未満、およびHbA1c5.8%未満に到達した場合と定義し、これらのいずれかを満たしていない場合は非寛解とした。

 PLISの参加者1,160人中298人(25.7%)は、介入により体重が5%以上低下し、そのうち128人(43.0%)が寛解に至っていた。寛解群は非寛解群より若年だった〔平均年齢55.6±9.9対60.4±8.6歳(P<0.0001)〕。一方、DPPのプラセボ群のうち5%以上の減量を達成した参加者のうち、寛解に至った割合は19%だった。

 PLIS参加者については、BMIやインスリン感受性、インスリン分泌能、異所性脂肪量の変化なども分析された。これらのうちBMIの変化をみると、寛解群はベースライン時が32.4±5.6で12ヵ月後は29.0±4.9、非寛解群は同順に32.1±5.9、29.2±5.4であり、低下幅に有意差がなかった(P=0.86)。BMIの変化に有意差がないにもかかわらず、全身のインスリン感受性は寛解群の方が有意に大きく改善していた(P<0.0001)。ただし、インスリン分泌能の変化は有意差がなかった(P=0.46)。

 また、肝臓内脂肪は介入期間中に両群で減少し、減少幅に有意差はなかった(P=0.34)。一方、内臓脂肪は寛解群の減少幅の方が有意に大きかった〔寛解群は6.2±2.9Lから4.1±2.3L、非寛解群は5.7±2.3Lから4.5±2.2L(P=0.0003)〕。

 介入終了後2年間での2型糖尿病発症リスクは寛解群の方が73%低く、有意差が存在した〔リスク比0.27(95%信頼区間0.08~0.90)〕。

 介入によるインスリン分泌能の変化は寛解群と非寛解群とで有意差がなかったことから、著者らは、「前糖尿病の寛解は、インスリン感受性の改善、および内臓脂肪量の減少とによって特徴付けられる」と総括。また、「正常耐糖能への回復は2型糖尿病の発症抑制につながる。われわれは、2型糖尿病患者を寛解に導くという治療が重要であるのと同様に、前糖尿病の寛解も重要であり、それを今後の介入の目標とすることを提案したい」と述べている。

 なお、数人の著者がヘルスケア関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2023年10月11日]

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