健康寿命の延伸のために1日に9000歩、自覚的な健康状態の改善のために1.1万歩を目標に 京都府立医科大学
健康寿命を延伸するために1日に9000歩 健康状態を改善するために1.1万歩
京都府立医科大学は、健康寿命のAI指標を用いて、1日の歩数と健康寿命の関係を解明し、健康寿命の延伸につながる1日のウォーキング目標歩数を明らかにした。
健康寿命を延伸するためには1日に9,000歩を、自覚的な健康状態を改善するためには1万1,000歩を、それぞれ目標にして歩くことを提唱している。
研究グループは今回、全国の国民生活基礎調査票と国民健康栄養調査票の成人4,957人のデータをもとに、健康寿命のAI指標(HCAL)を用いて解析した。
健康寿命の延伸には身体活動の増加が重要であり、なかでもウォーキングは、もっとも手軽にできる運動だ。これまで、心血管病発症は7,200歩、死亡は8,800歩まで、1日の歩数が増えるにともないリスクが低下することが報告されている。
しかし、1日歩数と健康寿命の関係については良く分かっていない。そこで研究グループは今回、全国の国民生活基礎調査票と国民健康栄養調査票のデータをもとに、健康寿命のAI指標(HCAL)を用いて解析した。
目標値に達しなくても今より多く歩くことが大切
「HCAL(健康寿命の指標)」は、AI/機械学習を用いて開発した、疾病負荷を統合したもので、健康寿命の予測と、健康寿命の新たな健康指標となる。
研究グループはこれまで、HCALを用いて、健康寿命に大きな影響を与える要因が、うつ病などこころの病気、腰痛や骨折など筋骨格系の問題、脳神経疾患などであることを報告してきた。
「今回の研究により、1日の歩数と健康寿命の関係が明らかとなり、健康寿命を延伸するための目標値9,000歩/日と、自覚的な健康状態を改善するための目標値11,000歩/日を提唱することができました」と、研究者は述べている。
「目標値に達しなくても、今より1歩でも多く歩くことが、健康寿命を延伸し、死亡や心血管病発症リスクの減少につながります」としている。
「研究成果は、国や自治体の健康寿命延伸を目指した保健医療政策や、個人の健康増進に貢献できると考えます。健康寿命のAI指標(HCAL)は、電子カルテや医療介護レセプトデータとの親和性も高く、研究やアプリケーションへの応用など今後も様々な用途で用いられると予想しています」としている。
研究は、京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学の西真宏助教、的場聖明教授、同大学院医学研究科地域保健医療疫学の長光玲央助教、京都府健康福祉部らによる研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Health & Care Informatics」にオンライン掲載された。
自覚的な健康状態を改善するための1日歩数の目標値は1万1,000歩
国民生活基礎調査票と国民健康栄養調査票のデータを解析
研究グループは今回、2019年全国の国民生活基礎調査票と国民健康栄養調査票の突き合せデータのうち、成人4,957人のデータを使用した。国民生活基礎調査では、年齢別の日常生活での活動制限(主指標)や、自覚的な健康状態(副指標)を生命表に組み入れて、健康寿命が算出されている。
活動制限と自覚的な健康状態を主要評価項目とし、健康寿命のAI指標(HCAL)を副次評価項目とした。国民生活基礎調査票の「あなたは現在健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問により、活動制限の「あり」「なし」を判定
さらに、「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問により、「自覚的に健康」と「自覚的に不健康」を判定した。
1日歩数と健康寿命のAI指標との関係について、成人全体と65歳以上の人で調べたところ、年齢に関わらず1日歩数が増加するにしたがいHCALは増加し、やがてフラットになることが分かった。性別による違いはみられなかった。
次に、閾値推定の不確かさを最小化する方法で、データを1,000倍に増幅し、多変量ロジスティック回帰モデルで解析した。
その結果、1日歩数が増加すると活動制限の調整オッズは減少し、やがてフラットになったが、HCALについては、健康寿命の延伸は9,000歩/日に達するまで上昇し、自覚的な健康状態の改善は、11,000歩/日に達するまで上昇した。これらの結果は年齢により変わらなかった。
京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
Association between daily step counts and healthy life years: a national cross-sectional study in Japan (BMJ Health & Care Informatics 2024年5月1日)