糖尿病の発症に関わる遺伝子を新たに発見 過食ストレスによるβ細胞の損傷を抑制 大阪公立大学など

過食によるストレスによりβ細胞内で発現量が増加する遺伝子を特定
膵臓内のβ細胞が過食などによるストレスにより損傷を受け、インスリンの分泌量が減少することが2型糖尿病のひとつの原因になっている。とくに日本人を含むアジア人はインスリン分泌能が低下しやすいことが知られている。糖尿病の予防では、β細胞が損傷を受けるメカニズムの解明することが必要になる。
そこで大阪公立大学などの研究グループは今回、過食によるストレスによりβ細胞内で発現量が増加する遺伝子のひとつを特定。この遺伝子の発現量増加がβ細胞に損傷を与え、インスリンの分泌量低下や糖尿病の発症につながることを明らかにした。
また、この遺伝子の発現を抑制することで、過食によるストレスを加えてもβ細胞の損傷が抑えられ、糖尿病の発症を防げることを、培養細胞およびモデルマウスを用いた実験で明らかにした。
研究は、大阪公立大学大学院農学研究科の原田直樹准教授、山地亮一教授らと、大手前大学、東京大学、Lundquist Institute at Harbor UCLA Medical Center、UCLAデヴィッド・ゲフィン医科大学院らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」にオンライン掲載された。

REDD2遺伝子の発現を抑制すると過食ストレスによるβ細胞の損傷を抑えられる
研究グループは今回、膵臓β細胞がストレスを受けた際に発現が増加する遺伝子産物 regulated in development and DNA damage response 2 (REDD2/DDiT4L/Rtp801L)に着目。
膵臓β細胞に酸化ストレスが加わると、REDD2は転写因子Nrf2やp53の標的遺伝子として発現量が増加し、β細胞の生存や機能に重要なシグナル伝達を阻害することを明らかにした。
さらに、REDD2を全身または膵臓β細胞特異的に欠損させたマウスを用いた実験で、REDD2が膵臓β細胞の細胞死を促進し、インスリン分泌の低下および耐糖能の異常を引き起こすことを見出した。
加えて、ヒト膵島のデータベースを用いた解析から、REDD2の発現量がインスリン分泌能や膵島量と負の相関を示すことを明らかにし、マウス実験との整合性を確かめた。
「本研究で、2型糖尿病を引き起こす原因遺伝子のひとつを明らかにすることができた。今後は、2型糖尿病の診断マーカーとしてのREDD2の利用や、REDD2を標的とした薬剤や機能性食品の開発につながることが期待される」と、研究者は述べている。
研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費 基盤研究B、挑戦的研究(萌芽)からの支援を受けて行われた。
大阪公立大学大学院農学研究科
Nrf2- and p53-inducible REDD2/DDiT4L/Rtp801L confers pancreatic β-cell dysfunction, leading to glucose intolerance in high-fat diet-fed mice (Journal of Biological Chemistry 2025年5月)