糖尿病・高血圧・脳卒中などのリスクで認知症発症を予測 高い予測能を確認

2023.09.05
予測能の高い認知症リスクスコアが英国で開発

 認知症発症を予測するリスクスコアが英国で新たに開発され、既存のリスクスコアより高い予測能を有することが確認された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMelis Anatürk氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Mental Health」に8月21日掲載された。

 認知症患者数が世界的に増加し、その対策が各国の公衆衛生上の喫緊の課題となっている。認知症発症リスクを予測し予防介入を強化することが、疾病負担の抑制につながると考えられることから、種々のリスクスコアが開発されてきている。ただし、いずれも予測能の限界が存在する。これを背景としてAnatürk氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータを用いて新たなリスクスコアを開発し、その予測能を検証した。

 UKバイオバンクのデータの8割に当たる17万6,611件をリスクスコア開発用、残り2割に当たる4万4,151件を検証用に用いた。また、英国におけるUKバイオバンクとは別の大規模コホートである「Whitehall II」のデータ2,934件を用いた外部検証も行った。

 UKバイオバンクにデータが収載されていて、かつプライマリケアで簡便に評価可能な28項目の認知症発症に関わる因子を抽出した上で、LASSO回帰モデルなどの統計学的手法により構築されたリスクスコアを「UKBDRS(U.K. Biobank Dementia Risk Score)」と命名。UKBDRSで評価する項目は、年齢、性別、家族歴(親の認知症)、教育歴、タウンゼント剥奪指数、糖尿病、脳卒中、うつ病、高血圧、高コレステロール血症、独居であり、遺伝子検査が可能な場合はこれにApoE4を加えた「UKBDRS-APOE」でリスクを評価する。

 ROC解析で検討したUKBDRSの認知症発症予測能〔ROC曲線下面積(AUC)〕は、UKバイオバンク開発コホートで0.79(95%信頼区間0.78~0.79)、同検証コホートで0.80(同0.78~0.82)、Whitehall IIでは0.77(0.72~0.81)だった。UKBDRS-APOEでは同順に、0.81(0.81~0.81)、0.83(0.81~0.84)、0.80(0.75~0.85)だった。

 これらの値は、現在臨床で使われている3種類のリスクスコアより優れていた。例えば、CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia)はUKバイオバンク検証コホートでのAUCが0.60(0.58~0.63)、Whitehall IIでは0.69(0.64~0.74)であり、DRS(Dementia Risk Score)は同順に0.77(0.76~0.79)、0.74(0.69~0.78)、ANU-ADRI(Australian National University Alzheimer’s Disease Risk Index)は0.57(0.54~0.59)、0.52(0.45~0.58)だった。

 論文共著者の1人である英オックスフォード大学のRaihaan Patel氏は、「異なる2種類の集団で高い予測能が確認されたことから、われわれはUKBDRSの精度に関して自信を深めているが、英国内のより多様な人々での精度検証も必要とされる」と述べている。

[HealthDay News 2023年8月25日]

Copyright ©2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料