【新型コロナ】ワクチンの有効性を感染研が調査 2回接種14日以降で95%と高いが今後は変動の可能性も

2021.09.08
 国立感染症研究所は、新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第1報)を発表した。
 ワクチン有効率は、2021年6月~7月時点で、1回接種14日以降2回接種13日までは76%、2回接種では91%、ワクチン2回接種14日以降では95%だった。
 ワクチン2回接種で高い有効率を認めるも、接種者割合が少ないため、今後変動の可能性もあるとしている。

ワクチン有効性を経時的に評価していく必要が

 新型コロナウイルス感染症のワクチン開発は未曾有のスピードで進んでいる。日本では2021年2月14日にファイザーの新型コロナワクチンが承認された。ファイザーおよびモデルナのmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で有効性(vaccine efficacy)が90%以上とされ、アストラゼネカのウイルスベクターワクチン1種類も有効性が70%程度とされた。

 しかし、免疫の減衰や変異株の出現による有効性の低下が指摘されており、国内外で、実社会でのワクチン有効性(vaccine effectiveness)を経時的に評価していく必要性がある。

 そこで、国立感染症研究所では、複数の医療機関の協力のもとで、発熱外来などで新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象に、インフルエンザワクチンなどの有効性評価で一般的に用いられている症例対照研究(test-negative design)を開始した。

 2021年6月9日~7月31日までに東京都内の5ヵ所の医療機関の発熱外来などを受診した成人を対象に、検査前に基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートを実施。除外基準である未成年者、意識障害のある者、日本語でのアンケートに回答できない者、直ちに治療が必要な者、同アンケート調査に参加したことのある者には調査参加の打診を行わなかった。

 後に各医療機関で診断目的に実施している核酸検査(PCR)の結果が判明した際に、検査陽性者を症例群(ケース)、検査陰性者を対照群(コントロール)に分類。発症から14日以内で、37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害のいずれか1症状のある者に限定して解析を行った。

都内5医療機関の発熱外来など受診者を対象に調査

 報告は、感染研感染症疫学センター、クリニックフォア田町、KARADA内科クリニック、公立昭和病院、聖路加国際病院、国際医療福祉大学成田病院、埼玉医科大学総合医療センター、新宿ホームクリニック、日本赤十字社医療センター、複十字病院、横浜市立大学付属病院によるもの。

 ワクチン接種歴については、未接種、1回接種のみ、2回接種の3つのカテゴリーに分類。また接種後の期間を考慮するため、未接種、1回接種後13日目まで、1回接種後14日から2回接種後13日目まで(partially vaccinated)、2回接種後14日以降(fully vaccinated)の4つのカテゴリーに分類した。

 ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出し、ワクチン有効率は(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析での調整変数としては、先行研究を参照し、年齢、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1か月の新型コロナウイルス検査の有無をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率では、多変量解析から得られた調整オッズ比を使用した。

 都内の5医療機関で、発熱外来などを受診した成人1,525名が調査への協力に同意した。うち、発症日不明および発症から15日以降に受診した69名、症状のなかった326名を除外して解析を行った。

 解析に含まれた1,130名のうち、新型コロナウイルス検査の陽性者は416名(36.8%)だった。その基本特性は、年齢中央値(範囲)33(20~83)歳、男性546名(48.3%)、女性584名(51.7%)であり、何らかの基礎疾患を267名(23.6%)で有していた。

 また、ワクチン接種歴について、未接種者は914名(83.4%)、1回接種した者は141名(12.9%)、2回接種した者は41名(3.7%)だった。なお、ワクチン接種歴のある182名中、回答のなかった9例を除いて63名(36.4%)がワクチン接種記録書などの原本や写真などを携帯しており、110名(63.6%)はカレンダーや手帳を見ながらアンケートに回答した。

2回接種で高い有効率を認めるも、接種者割合がまだ少ない

 ワクチン接種歴を接種回数別で3つのカテゴリーに分け、検査陽性者(症例群)と検査陰性者(対照群)とで比較した。

 その結果、未接種者を参照項とする調整オッズ比は、1回接種者では0.52(0.34-0.79)、2回接種者では0.09(0.03-0.30)だった。

 次に接種後の期間ごとに検討したところ、1回接種13日目までの調整オッズ比は0.83(0.51-1.37)、1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)では0.24(0.12-0.47)、ワクチン2回接種14日以降(fully vaccinated)では0.05(0.00-0.28)だった。ワクチン接種歴不明例・接種日不明例は主解析では対象から除外したが、未接種として解析に含めた場合でも調整オッズ比は同様だった。

 調整オッズ比を元にワクチン有効率を算出したところ、1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)では76%(95%CI 53-88%)、2回接種では91%(95%CI 70-97%)、ワクチン2回接種14日以降(fully vaccinated)では95%(95%CI 72-100%)だった。

ワクチンの有効性は今後変動する可能性も
変異株の割合、接種からの期間などが影響

 今回の報告では、ワクチンを接種して14日以上経過した者では未接種者と比較して、有意に感染のオッズが低く、国内でも現時点で承認されているワクチンの新型コロナの発症に対する有効性が示された。また、接種回数・(短期的には)接種からの期間が長くなるにつれて有効率が高くなる傾向がみられた。

 ワクチンを2回接種している者では高いワクチン有効率を認めたが、人口に占める新型コロナワクチンを2回以上接種している者の割合が小さく、2回接種してから14日後以降に診断された者(いわゆるブレイクスルー感染例)を1名で認めるのみであるため、今後の解析で変動する可能性があるとしている。

 ただし、諸外国の実社会でのワクチン有効性評価とおおむね一致するものであり、たとえば英国からの報告では、接種間隔が日本とは異なるものの、ファイザーの新型コロナワクチン(BNT162b2)接種者でのB.1.1.7系統(アルファ株)に対する有効率は93.7%(95%CI 91.6-95.3%)、B.1.617.2系統(デルタ株)に対する有効率は88.0%(95%CI 85.3-90.1%)だった。

 留意すべき点として、ワクチンの有効性は、流行状況、各変異株の割合、感染対策の緩和、ワクチン接種からの期間(免疫減衰の可能性)などの要素が影響している可能性があり、総合的に、経時的に判断すべきであることが挙げられる。

 一方で、今回の報告では1回接種13日目までは有効性が認められず、これは先行研究と一致する結果だった。これはバイアスの影響が少ないことを示唆する指標のひとつとなっている。

 なお、諸外国や今回の報告の通り、新型コロナワクチンの有効性は100%ではない(ブレイクスルー感染が起こりうる)ため、現状の流行状況ではワクチン接種者でも感染対策を継続することが重要としている。

 調査期間中、東京都では6月20日までは緊急事態宣言、6月21日から7月11日まではまん延防止など重点措置、7月12日からは緊急事態宣言が発出されていた。また、民間検査会社での変異株スクリーニングの状況としては、6月初旬の調査開始時にはB.1.1.7系統(アルファ株)が大部分だったが、7月下旬にはB.1.617.2系統(デルタ株)が大部分を占めるという置き換わり期だった。

 同調査は、感染研および協力医療機関で、ヒトを対象とする医学研究倫理審査で承認され、実施された。今回の報告は、その6~7月分の暫定結果で、迅速な情報共有を目的としたもの。内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。

新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第一報)(国立感染症研究所 2021年8月31日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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