デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」が2型糖尿病患者の肝脂肪含量を改善 減少率は47.11%でインスリンの2倍以上

2021.10.13
 イーライリリー・アンド・カンパニーは、成人2型糖尿病患者を対象とした第3相臨床試験「SURPASS-3試験」のMRIサブスタディの結果から、デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」が、インスリンデグルデクの漸増投与に比べ、肝脂肪含量および内臓脂肪量を改善したことを発表した。詳細は、第57回欧州糖尿病学会(EASD2021)で発表された。
 ベースラインから30%以上の肝脂肪含量(LFC)の減少を達成した被験者は、チルゼパチドの3用量群で66.9%~81.4%だったのに対し、インスリンデグルデク群では32.12%となり、2倍以上の差がついた。

成人2型糖尿病患者では肝臓脂肪や内臓脂肪など異所性脂肪が多くみられる

 チルゼパチドは、GIPとGLP-1の両インクレチンの作用を単一分子に統合した週1回投与のデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬。GIPは、GLP-1受容体作動薬の効果を補完するホルモン。前臨床モデルで、GIPは食物摂取量を減少させエネルギー消費を増加させることが示されているため、体重の減少をもたらすと考えられる。また、GLP-1受容体作動薬と併用することでグルコースと体重に対してより大きな効果をもたらす可能性がある。

 同剤は、成人2型糖尿病患者の血糖管理と慢性的体重管理のために第3相試験で開発中。また、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)および左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の治療薬としても研究されている。

 「SURPASS-3試験」は、SGLT-2阻害薬の併用の有無にかかわらず、維持用量のメトホルミンでは血糖コントロールが不十分な成人2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチドの有効性および安全性をインスリンデグルデクの漸増投与と比較評価した52週間の多施設共同無作為化第3相非盲検試験。

 同試験では、インスリンデグルデク投与群の被験者は、1日平均10単位で投与を開始した。インスリン投与量は空腹時血糖が90mg/dL未満を目標に、treat-to-targetの治療アルゴリズムに従い漸増した。被験者はインスリンによる治療歴がなく、糖尿病の平均罹病期間は8.4年、ベースラインのHbA1cは8.17%、ベースラインの体重は94.3kgだった。

 SURPASS-3試験のMRIサブスタディでは、SURPASS-3試験の部分集団を対象にチルゼパチドとインスリンデグルデク漸増投与の有効性について、肝脂肪含量(LFC)、内臓脂肪組織量(VAT)、腹部皮下脂肪組織量(ASAT)をMRIスキャンの評価を用いて比較した。対象は、脂肪肝指数(Fatty Liver Index)が60以上の成人2型糖尿病で、LFC上昇のリスクが高い被験者。

 296名の被験者が同サブスタディに登録され、チルゼパチド5mg、10mg、15mgまたはインスリンデグルデク投与群のいずれかに無作為に割り付けられた。主要評価項目は、MRIスキャンで測定したベースラインから52週時のLFC割合の変化に対するチルゼパチド(10mgおよび15mgの併合群)の効果をインスリンデグルデクと比較すること。

 副次評価項目は、LFCが10%以下になった被験者の割合、LFCがベースラインから30%以上相対的に減少した被験者の割合、ベースラインからの内臓脂肪組織量および皮下脂肪組織量の変化で、チルゼパチド5mg、10mg、15mgとインスリンデグルデクを比較した。

チルゼパチドはインスリンデグルデクに比べて、2倍以上が肝脂肪含量を30%以上減少

 その結果、MRI(磁気共鳴画像)サブスタディで、主要評価項目および副次評価項目を達成したことが示された。MRIによる評価から、52週時点でインスリンデグルデク群と比較したところ、チルゼパチドの3用量(5mg、10mg、15mg)投与全群で肝脂肪含量がいずれも有意に減少し、内臓脂肪組織量および腹部皮下脂肪組織量はインスリンデグルデク群でともに増加したのに対し、チルゼパチドの3用量投与群では減少した。

 チルゼパチドを投与した被験者での、52週時の結果は以下の通り――。
⚫ 主要評価項目である10mgおよび15mgの併合群の肝脂肪含量(LFC)のベースラインからの絶対的減少(ベースラインの15.67%から-8.09%)は、インスリンデグルデク群(ベースラインの16.58%から-3.38%)と比較して有意に大きいことが示された。
⚫ LFCのベースラインからの相対的減少(チルゼパチドの3用量群で29.78%~47.11%)は、インスリンデグルデク群の11.17%と比較し、いずれも有意に大きいことが示された。
⚫ ベースラインから少なくとも30%のLFCの減少を達成した被験者は、チルゼパチドの3用量群で66.9%~81.4%だったのに対し、インスリンデグルデク群では32.12%だった。
⚫ VATは、インスリンデグルデク群でベースラインの6.34Lから+ 0.38Lの増加に対し、チルゼパチド群(15mg)ではベースラインの6.81Lから最大-1.65Lへ有意に減少した。ASATは、インスリンデグルデク群でベースラインの10.04Lから+0.63Lの増加に対し、チルゼパチド群(10mg)ではベースラインの10.21Lから-2.25L減少した。

 SURPASS-3試験でのチルゼパチドの全体的な安全性プロファイルは、これまでに確立されたGLP-1受容体作動薬の薬剤クラスと同様だった。もっとも多く報告された有害事象は消化器系の副作用であり、投与継続にともない減少した。

 イタリアの臨床生理学研究所、心臓代謝リスクユニットのリサーチディレクターであるAmalia Gastaldelli氏は次のように述べている。
 「成人2型糖尿病患者さんに多くみられる肝臓脂肪や内臓脂肪のような異所性脂肪の増加は、炎症反応と心血管代謝リスクの上昇に関連しています。チルゼパチドの3用量すべてで、肝脂肪含量が増加した成人2型糖尿病患者群の肝脂肪含量および内臓脂肪の顕著な減少が認められたことは励みになります」。

57th annual meeting of the European Association for the Study of the Diabetes (EASD)
The effects of tirzepatide on liver fat content and abdominal adipose tissue in patients with type 2 diabetes (SURPASS-3 MRI)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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