糖尿病黄斑浮腫に対するVEGF阻害剤「ベオビュ硝子体内注射用キット」の効能追加の承認を取得
VEGF阻害剤は、効果的に浮腫を抑制し、長期的な視力改善効果を期待できる
「糖尿病黄斑浮腫(DME)」は、糖尿病およびその細小血管障害のひとつである糖尿病網膜症を基礎疾患として、網膜の毛細血管瘤や毛細血管の透過性亢進により血漿成分が網膜内に貯留し、網膜の中心部である黄斑部組織に浮腫を生じ、視力障害がおきる疾患。国内でのDME患者数は約65万人と推計されている。
DMEは、視力低下を引き起こす可能性があるため、早期に治療を行うことが推奨されており、治療法としては、VEGF阻害剤やステロイド薬などによる薬物治療、レーザー光凝固、硝子体手術などがある。
現在、中心窩を含むDME治療には、VEGF阻害剤が第一選択とされており、硝子体内へVEGF阻害剤を直接投与することにより、低下した視力の改善や、視力の長期的な維持が期待される。しかし、治療は長期にわたるため、通院や硝子体内投与にともなう患者への負担は大きい。
ノバルティスは、効果的に浮腫を抑制し、長期的な視力改善効果が得られる治療薬の開発を進めている。「ベオビュ」は、DME治療に対して承認されている他のVEGF阻害剤に比べ、分子量が小さく、高濃度での投与が可能。持続的な浮腫の抑制が期待されることから、同剤はDMEに対するVEGF阻害剤治療における新たな選択肢となるとしている。
今回の承認は、DME患者を対象に同剤とアフリベルセプト2mgを比較した第3相臨床試験であるKESTREL試験およびKITE試験のデータにもとづく。
KESTREL試験およびKITE試験には、36ヵ国から926人の患者が参加した。両試験の導入期投与期間で、「ベオビュ」の患者群には6週間隔で計5回の投与がされ、アフリベルセプト群は、4週間隔で計5回投与された。
1年目の結果で、同剤は52週時点の最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量についてアフリベルセプト2mgに対する非劣性を示した。
なお、52週時点に滲出性変化(IRF:網膜内の滲出液/SRF:網膜下液)が認められた患者の割合も低値を示した(KESTREL試験では、ベオビュ群60.3%対アフリベルセプト群73.3%。KITE試験では、54.2%対72.9%。優越性検定は実施されていない)。
いずれの試験でも、導入期投与後でのベオビュ群の患者の半数以上(KESTREL試験で55.1%、KITE試験で50.3%)は、52週時点まで12週間隔投与を維持した。同剤はアフリベルセプトと比較して、より多くのDME患者に対して少ない投与回数で滲出液に対処できる可能性が示唆された。
今回の同剤の適応追加について、同社は「ベオビュのDME治療に対する適応追加が、視力の改善や維持を切望する患者さんにとって新たな希望となることを期待しています。ベオビュの持続的な浮腫抑制作用によって視力改善などの治療効果を患者さんが実感され、治療継続による負担が少しでも軽減されることを願います」と述べている。
下線部は今回追加承認された内容
製品名 | ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL |
一般名 | ブロルシズマブ(遺伝子組換え) |
中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性 糖尿病黄斑浮腫 |
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〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉 ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg(0.05mL)を4週ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。 〈糖尿病黄斑浮腫〉 ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg(0.05mL)を6週ごとに1回、通常、連続5回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。 |
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承認取得日 | 2022年6月20日 |
製造販売 | ノバルティス ファーマ株式会社 |
ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL 添付文書 インタビューフォーム (医薬品医療機器総合機構)
Brolucizumab for the treatment of visual impairment due to diabetic macular edema: 52-week results from the KITE and KESTREL studies (Investigative Ophthalmology & Visual Science 2021年6月)
KESTREL and KITE: 52-Week Results From Two Phase III Pivotal Trials of Brolucizumab for Diabetic Macular Edema (American Journal of Ophthalmology 2022年6月)