GLP-1受容体作動薬が心不全の症状と身体活動制限を改善

2024.04.17
肥満糖尿病関連HFpEFの症状改善にセマグルチドが有益

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のセマグルチドが、肥満2型糖尿病にともなう駆出率が保たれた心不全(HFpEF)の症状と身体活動制限を有意に改善することを示すデータが報告された。

 米セントルークス・ミッド・アメリカ心臓研究所のMikhail N. Kosiborod氏らの研究によるもので、米国心臓病学会(ACC24、4月6〜8日、アトランタ)で発表されるとともに、「The New England Journal of Medicine」に4月6日掲載された。

 肥満や2型糖尿病ではHFpEFを来しやすく、それらが併存する場合、患者の疾病負担がより大きくなる。しかし、駆出率が低下した心不全(HFrEF)に比較してHFpEFは治療法に関するエビデンスが不足しており、肥満2型糖尿病患者のHFpEFに対する治療法は確立されていない。

 一方で近年、GLP-1RAがHFpEFにも有用である可能性を示唆するデータが報告されるようになった。以上を背景としてKosiborod氏らは、GLP-1RAであるセマグルチドの肥満2型糖尿病患者のHFpEFに対する有用性を検討する、無作為化比較試験を実施した。

 研究参加者は、BMI30以上で2型糖尿病のある心不全患者616人。無作為に2群に分け、1群にはセマグルチド2.4mgを週1回投与し、他の1群にはプラセボを投与した。

 介入期間は52週間で、主要エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)、および体重のベースラインからの変化。二次エンドポイントは、6分間の歩行距離やC反応性蛋白(CRP)レベルの変化、および、それらと死亡、KCCQ-CSS、心不全イベントを含む階層的複合エンドポイント。なお、KCCQ-CSSは範囲が0~100点で、スコアが高いほど症状や身体活動制限が少ないことを意味する。

 主要エンドポイントであるKCCQ-CSSの変化は、セマグルチド群が平均13.7点、プラセボ群は6.4点〔推定群間差7.3点(95%信頼区間4.1~10.4)〕、体重の変化率は同順に-9.8%、-3.4%〔同-6.4パーセントポイント(-7.6~-5.2)〕であり、ともに有意差が認められた(いずれもP<0.001)。

 また二次エンドポイントについても、6分間の歩行距離の変化は推定群間差14.3m(95%信頼区間3.7~24.9、P=0.008)、CRPの変化は同0.67mg/dL(0.55~0.80、P<0.001)、階層的複合エンドポイントのwin ratioは1.58(1.29~1.94、P<0.001)であり、いずれもセマグルチド群の方が優れていた。

 著者らは、「セマグルチドを週1回2.4mg投与すると、52週時点でプラセボよりも心不全関連の症状と身体活動制限が有意に軽減された。また体重減少幅もセマグルチド群で有意に大きかった」と総括している。

 なお、数人の著者が、セマグルチドのメーカーであり本研究に資金提供したノボノルディスク社を含む、バイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2024年4月9日]

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