スマホの「食事記録アプリ」の正確性を検証 コンビニ食では正確だが、病院食では栄養価を過大評価

2022.09.26
 藤田医科大学は、複数の「食事記録アプリ」の正確性について、すでに栄養価のわかっている食品を用いて検討した。その結果、いわゆるカップ麺や野菜ジュースなどについては、個人や年齢に関わらず、簡便にかつ正確に測定できることが示された。

 一方で、病院食は、さまざまな病気をもつ人が対象であり、食塩や脂質をできるだけ減らす工夫がされている。そのため、病院食のように工夫を凝らした食事メニューについては、エネルギーや塩分や脂質などの栄養素を過大評価してしまうことが分かった。

 「食事記録アプリは現在幅広く使用されており、病気の方が使うことも予想されるため、特殊な食事を評価する場合には、結果の解釈に注意が必要とみられます」と、研究者は述べている。

普及している食事記録アプリの正確性を検証

 「食事記録アプリ」は、スマートフォンなどのデバイスで毎日の食事内容を記録し、管理するためのアプリ。登録されたメニューからの食事を記録したり、写真などを撮りメニュー登録をすると、自動的にエネルギーや栄養素などのバランスを表示するものや、運動や体重管理などについても記録できるものが出ている。

 食事量を評価する方法には、「計量法」「24時間思い出し法」「記録紙法」「食品摂取頻度調査」などがあるが、正確に測定することは困難だ。食事記録アプリは、機能の簡便性から多くの方に使われるようになっており、魅力的な方法である反面、その正確性に関する検討はあまり行われていない。

 藤田医科大学病院国際医療センターで行われている精密健診では、食品摂取頻度調査と3日間の記録紙法を用いて栄養評価を行っているが、患者の労力・負担は大きい。

 そこで研究グループは、食事記録アプリを用いた栄養指導と、アプリの正確性について検討した。2種類の異なる食事(コンビニ食、病院食)に対する、食事記録アプリの正確性を調査した。

特殊な食事では塩分・脂質の評価に注意を要する

 研究グループはあらかじめ、エネルギー量および3大栄養素の含有量の分かっている食事を2種類用意した。ひとつは、若い人がコンビニで昼に買う食事を想定して、「カップラーメン+野菜ジュース(コンビニ食)」、もうひとつは「病院で提供される常食(病院食)」。

 これらの食事に対して、日本でシェアの高い2種類の食事記録アプリ(あすけん、カロミル)を用いて、18人を対象に5日間(合計5回)計測を行った。

 その結果、コンビニ食では2つの食事記録アプリとも、はじめて使う人でも、個人や年齢によらず、簡便かつ正確に栄養価を評価できることが分かった。

 一方、病院食では、エネルギー量を含め、栄養価を過大評価することが分かった。栄養素のなかでは、塩分や脂質の評価が難しいことも示された。

 「今回の検討を通じて、食事記録アプリの簡便性・正確性が示された反面、特殊な食事(病院食)の場合には、結果の解釈に注意が必要と分かりました。脂質、塩分、砂糖は見た目では含有量の評価は難しいので、食事記録アプリと血液や尿などのバイオマーカーとを組み合わせた栄養評価法を開発していきたいと思います」と、研究グループでは述べている。

食事記録アプリは、コンビニ食などに対しては正確に測定できるが、病院食ではエネルギー量・塩分・脂質の評価は難しいことが示された
出典:藤田医科大学、2022年

食事記録アプリは簡便に利用できるのが魅力的

 研究は、藤田医科大学臨床栄養学講座の飯塚勝美教授、国際医療センターの佐々木ひと美教授、内分泌・代謝・糖尿病内科学の鈴木敦詞教授、食養部の伊藤明美副部長らの研究グループによるもの。研究成果は、学術ジャーナル「Nutrients」に掲載され、あわせてオンライン版も公開された。

 「食事記録アプリは、いわゆる既製品(カップラーメンや野菜ジュース)については、誰でもまたはじめてでも正確に測定できる優れたアプリであることが示されました。一方、病院食は、食塩や脂肪を減らす工夫が施されているため、食事記録アプリによる病院食の測定では、とくに脂質の測定が難しいことが分かりました」と、研究グループでは述べている。

 「食事記録アプリは現在幅広く使用されており、病気の方が使うことも予想されるため、特殊な食事を評価する場合には、結果の解釈に注意が必要とみられます」としている。

藤田医科大学臨床栄養学講座
Nutritional Assessment of Hospital Meals by Food-Recording Applications (Nutrients 2022年9月11日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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