サルコペニア肥満を体成分分析を活用し簡便にスクリーニング 骨格筋減少と体脂肪増加が同時進行 大阪大学
サルコペニア肥満の予備群を骨格筋量と体脂肪率でスクリーニング
大阪大学は、サルコペニア肥満の予備群のスクリーニング法を、体成分分析の活用により開発したと発表した。
サルコペニア肥満(SO)は、骨格筋減少と体脂肪増加をあわせもち、さらに筋力低下や身体機能低下を合併する病態。早期発見・介入が重要だが、これまで早期のSOに焦点を当てた研究はなく、その病態は十分に評価されてしなかった。
肥満は一般的に、BMI(体格指数)によって定義されるが、BMIによる肥満の評価だけでは、骨格筋量の減少と体脂肪の増加を同時に有する状態であるSO予備群は見逃されやすい。
研究グループは今回、女性の健診受検者で体成分分析にもとづき、骨格筋量指数(SMI)<5.7kg/m²、かつ体脂肪率(PBF)≥30%を満たす群を「SO予備群」、SMI≥5.7kg/m²、かつPBF<30%を満たす群を「健康(H)群」と定義した。体成分分析は、体を構成する成分である水分量、骨格筋量、脂肪量などを推定する検査だ。
その結果、SO群ではH群に比べ、握力の低下に加えて、中性脂肪やLDLコレステロール、インスリン抵抗性指標(HOMA-R)などの代謝指標が高値であることが明らかとなった。体成分分析で定義されたSO予備群は、代謝疾患になりやすい可能性が示唆され、SO予防の観点から体成分に注目することの重要性が示された。
また、SO予備群では、SOにより高値になるとされる血清ミオスタチン濃度が逆に低値であることが示され、ミオスタチンが病期によって異なる働きをする可能性が示唆された。
SOはメタボリックシンドロームや心血管リスクとの関連が知られており、SO予備群の段階でスクリーニングを行い、適切な介入をはじめることは重要となる。しかし、これまで通常の健診だけでは体成分の評価が行わないことなどから、SOのリスクが見落とすという課題があった。
サルコペニア肥満では骨格筋減少と体脂肪増加が同時進行
見た目ではなく体の組成に目を向けることが重要
研究は、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの石橋千咲助教、中西香織准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
研究グループは今回、大阪大学で定期職員健診を受検した30~59歳の女性職員432人(受検年度2022年)を対象に、体成分分析(InBody 270)を施行し、骨格筋量指数(SMI)<5.7kg/m2かつ体脂肪率(PBF)≥30%を満たす群をサルコペニア肥満(SO)予備群、SMI≥5.7kg/m2かつPBF<30%を満たす群を健康(H)群と定義し、各臨床指標をH群とSO予備群で比較検討した。また、健診での測定項目に加え、血清インスリンおよびミオスタチン濃度を測定、比較した。
その結果、BMIや腹囲については両群で差がなかった一方、握力についてはSO予備群で有意に低値、中性脂肪、LDLコレステロール、インスリン抵抗性指標(HOMA-R)については、SO予備群で有意に高値だった。
また、血清ミオスタチン濃度はSO予備群でH群と比較し低値だった。一般的に、血清ミオスタチンはサルコペニアや肥満の状態では高値となることが知られているが、今回の研究では逆の結果になった。このことより、ミオスタチンが病態の進行度によって異なる働きをする可能性が示唆された。
「本研究で、体成分分析にもとづくサルコペニア肥満(SO)予備群がすでに様々な代謝指標で好ましくない方向に有意差を認めていること、とくに握力低値がSO予備群を特徴づける重要な因子であることが明らかとなった」と、研究者は述べている。
「今回のSO予備群の方々は、見た目では肥満を呈していなかった。多くの人が美容の観点からやせ願望をもつ傾向があるが、SOリスクを見落とすことなく疾患を予防するためには、見た目ではなく体の組成に目を向けることが重要と考えられる」。
「そのために今後、健康診断などの場面で体成分分析や握力測定の導入が進むことを期待する。また、早期サルコペニア肥満の病態解明のため、ミオスタチンを含めた関連因子について今後のさらなる検討が望まれる」としている。
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター
Myostatin as a plausible biomarker for early stage of sarcopenic obesity (Scientific Reports 2024年11月19日)