SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の費用対効果は高くない コストを下げる必要が

2型糖尿病患者に対する血糖降下薬使用に関するガイドラインでは、第1選択薬をメトホルミンとし、比較的新しい薬剤であるSGLT2iやGLP-1RAは第2選択薬のなかに位置付けられている。しかし近年、それらの薬剤の肥満や心不全、腎機能に対する有用性が明確になったことで、第1選択薬として格上げする提案がなされるようになった。ただし、メトホルミンが極めて安価であるのに対して、SGLT2iやGLP-1RAはいまだコストが高く、積極的な推奨には費用対効果の面からの検討も必要とされる。
このような背景の下、G. Choi氏らは、ファーストラインとして、SGLT2iまたはGLP-1RAを用いた場合の費用対効果を検討した。研究には、米国内のドラッグナイーブ2型糖尿病患者を対象に実施された無作為化比較試験、疾病管理予防データベース、国民健康栄養調査などのデータを用い、SGLT2iまたはGLP-1RAをファーストラインで用いた場合の平均余命、生涯コスト、質調整生存年(quality adjusted life year;QALY)、増分費用対効果比(incremental cost-effectiveness ratio;ICER)を算出した。
分析の結果、ファーストライン治療にSGLT2iまたはGLP-1RAを用いた場合、うっ血性心不全、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳卒中の生涯発症率は、メトホルミンに比べて低いと推計された。個別に見ると、SGLT2iは対メトホルミンで質調整生存期間が1.8ヵ月延長した。一方で一次治療のコストは4万3,000ドル高く、ICERは1QALYあたり47万8,000ドルと計算された。GLP-1RAも高コストであり、注射製剤のICERは1QALYあたり32万7,000ドル、経口製剤では同82万3,000ドルと計算され、後者は費用対効果がより低かった。
また、1QALYあたり15万ドル未満で費用対効果を高めるには、SGLT2iであれば1日のコストを5ドル未満、経口のGLP-1RAであれば6ドル未満にする必要があると計算された。つまり、第1選択薬として、SGLT2iやGLP-1RAを使用した場合、2型糖尿病患者の転帰改善にはつながるものの、費用対効果を高めるために少なくとも現在より70%、コストを下げる必要があることが示された。
著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病患者のアウトカムを改善し、かつ健康格差の拡大を防ぐためには、SGLT2iやGLP-1RAの薬剤費を大幅に削減することで、質の高いケアへのアクセスを改善する必要があることを示している」と述べている。なお、本研究は、米国の人口構成および医療コストを基に試算されており、結果を国際的に一般化できるとは限らない。
[HealthDay News 2022年10月3日]
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