GLP-1受容体作動薬を使用している糖尿病患者は認知症リスクが低下 DPP-4阻害薬やSU薬と比較 認知症予防の潜在的有効性を示唆
2型糖尿病患者の認知症予防でのGLP-1受容体作動薬の潜在的有効性を示唆
GLP-1受容体作動薬を使用している2型糖尿病の高齢患者は、DPP-4阻害薬やSU薬(スルホニル尿素薬)を使用している患者よりも、認知症の発症リスクが低いことが、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究で明らかになった。研究成果は、「eClinicalMedicine」に掲載された。
研究グループは、スウェーデン国民医療データを使用し、2010年1月~2020年6月の連続試験エミュレーションを実施。GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SU薬が使用されているスウェーデン在住の65歳以上の2型糖尿病患者を最大10年間追跡し、認知症リスクを評価した。
対象となったのは、ベースラインでGLP-1受容体作動薬(1万2,351人)、DPP-4阻害薬(4万3,850人)、SU薬(3万2,216人)の処方を受けていた計8万8,381人の高齢患者で、平均4.3年間追跡して調査した。ランダム化臨床試験を模倣したターゲット試験エミュレーションと呼ばれる研究設計を使用し、3種類の糖尿病薬と認知症リスクとの関連を分析した。
その結果、認知症の発症リスクは、GLP-1受容体作動薬を使用した患者は、DPP-4阻害薬を使用した患者に比べて23%低く[ハザード比 0.77、95%CI 0.68〜0.88、p<0.0001]、SU薬を使用した患者に比べて31%低かった[同 0.69、同 0.60〜0.79、p<0.0001]。
これらの結果は、プロトコル準拠解析を含む複数の感度による解析でも一貫しており、GLP-1受容体作動薬を使用した患者は、DPP-4阻害薬を使用した患者に比べて62%低く[ハザード比 0.38、95%CI 0.30〜0.49、p<0.0001]、SU薬を使用した患者に比べて59%低かった[同 0.41、同 0.32〜0.53、p<0.0001]。
また、DPP-4阻害剤はSU薬と比較して、認知症リスクをわずかに低下することも示された[ハザード比 0.89、95%CI 0.82~0.97]。一方、メトホルミンのみを使用した患者に限定すると効果は持続しなかった[同 1.02、同 0.91~1.14]。
「2型糖尿病患者は認知症を発症するリスクが1.7倍高いという報告があり、GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害剤などの新しい糖尿病治療薬に、認知症の予防効果があるのではないかと期待されている」と、同研究所疫学・生物統計学部のBowen Tang氏は言う。
「今回の結果は、2型糖尿病患者の認知症予防についてのGLP-1受容体作動薬の潜在的有効性を示唆しており、2型糖尿病の高齢患者に対しどの薬を使用するかについて医師がより適切な判断をするのに役立つものだ。ただし、GLP-1受容体作動薬が認知症のリスクを軽減することを証明するために、適切なランダム化比較試験の実施が必要となる」としている。
研究は、スウェーデン研究会議、カロリンスカ研究所、国立老化研究所、国立衛生研究所、国立銀行記念基金の資金提供を受けて実施された。利益相反は報告されていない。
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