外来患者の転倒リスクを高精度に予測する技術を開発 高血圧患者の降圧薬の不適切な使用は転倒・骨折リスクを2倍以上に上昇
外来患者の転倒リスクを予測する技術を開発 高い予測精度を実現
富士フイルムと順天堂大学医学部附属順天堂医院は、外来患者の転倒リスクを予測する技術を共同で開発したと発表した。
電子カルテ、放射線部門システム、内視鏡部門システムなど、院内のさまざまなシステムと連携する同社の医療機関向け統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」に集約された診療データから、年齢や特定の薬剤の処方歴など、500種類以上の転倒リスクと関連性が高い特徴量を生成し、AI技術を用いて、外来患者の転倒リスクを高い精度で予測できるようになったとしている。
同プラットフォームに登録されている診療データをもとに、各患者の転倒リスクを予測し、パーセンテージで表示し、また予測に寄与した特徴量を、想定される転倒リスク要因として提示することも可能としている。
順天堂医院の外来患者約7万人のデータを用いて、この技術の精度評価を実施したところ、予測精度を示すAUROCは0.96であり(値が1に近いほど予測精度が高い)、入院患者を対象にした先行研究(AUROC:0.90)と比べて、優れた結果が示された。
患者の転倒事故は、国内の医療現場で高い頻度で発生しており、転倒は骨折や頭部外傷などの大ケガにつながり、患者の生命予後やQOLに対して深刻な影響を及ぼす可能性がある。そのため、多くの医療機関では、入院患者を対象として、転倒リスクアセスメントシートを用いて患者の転倒リスクを判定・数値化し、リスクの程度に応じて付き添いや歩行介助などの転倒防止策を講じている。
一方で、外来患者は入院患者に比べてアセスメント対象となる患者数が多く、また医療機関での限られた滞在時間では患者の状態を把握することが困難であるため、十分に対応することが難しいという課題がある。
外来患者を対象とする、効率的かつ高精度に転倒リスクを評価できる技術を開発することで、医療従事者は、外来患者の転倒リスクを高い精度で評価できるようになるとしている。両者は今後、技術のさらなる有効性検証を進め、早期実用化を目指すとしている。
「順天堂医院では、長らく医療の質の指標(Quality Indicator)のひとつとして、75歳以上の外来患者さんの転倒発生率の低下を挙げてきました。今回は、これまで研究が進んでいなかった外来患者さんの転倒のリスク因子に着目し、統合診療データと機械学習を用いて転倒リスク予測モデルを構築しました。本研究結果が、外来患者さんの転倒リスクを精度高く予測し、医療機関が前もって対応することで、その発生率が低下することを期待しています」と、同院の桑鶴良平院長はコメントしている。
CITA Clinical Finder - 統合診療支援プラットフォーム (富士フイルム)
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