高齢の糖尿病患者の多くはCGMを使いこなすのが困難 高齢者はCGMを使っても75%で低血糖が

2023.02.10
 高齢の糖尿病患者の多くは、CGM(持続血糖モニター)や活動量計、スマホアプリなどを使いこなすのが困難であることが、米国のインディアナ大学レゲンストリーフ研究所の研究で示された。

 「高齢者の多くは、CGMなどのウェアラブル デバイスを使いこなすのが困難です。これは、そうしたデバイスのウェアラビリティとユーザビリティを改善するうえで課題があることを示唆しています」と、研究者は指摘している

高齢の糖尿病患者はCGMやスマホアプリを使いこなせるか?

 CGM(持続血糖モニター)や活動量計などのウェアラブル デバイスや、スマートフォンアプリなどを、1型糖尿病あるいは2型糖尿病の高齢者を対象に、低血糖の評価・管理のために使用した場合、これらのツールに対する患者・介護者のウェアラビリティと忍容性には課題があることを、米国のインディアナ大学レゲンストリーフ研究所が明らかにした。

 「CGMのデバイスなどのハードウェアとソフトウェアは、糖尿病医療でとくに変革が著しいテクノロジーです。データを読み取るデバイスと、記録・解析・送信するソフトウェアの組合せは日々進歩しています」と、同研究所医療サービス研究センターのMichael Weiner氏は言う。

 「しかし、そうした新しいテクノロジーが、現実世界でどのように機能するか、実際に使用する患者などに受け入れやすいものであるかは、最終的に治療による転帰に影響すると考えられる別の問題です」としている。

 そこで研究グループは、50~85歳の1型糖尿病あるいは2型糖尿病の患者10人を対象に、CGM、活動量計、自動メディシンボトル、スマートフォンアプリを使用してもらい、血糖値のグラフ表示の理解や、モニタリングの操作など、投薬・行動・症状についてプロンプトを促す研究を行った。

 次に、より大きなサンプル(n=70)を対象に、CGMと活動量計を装着してもらい、自動メディシンボトルとアプリを2週間使用してもらい、デバイスなどに関するフィードバックの提供を求めた。

CGMなどを使用した高齢患者の73%で低血糖、42%で重篤な低血糖

 その結果、2週間のモニタリング期間に、参加した患者の73%で低血糖(70mg/dL以下)が、42%で重篤な低血糖(54mg/dL未満)が示され、低血糖を経験した患者の多くは、家庭血糖測定でも低血糖が示された。

 さらに、参加者のほぼ3分の1で、日中の服薬や行動、症状などについてのプロンプトへの無応答があり、24%で装着していたCGMセンサが外れることがあった。

 参加した患者でもっとも一般的にみられた訴えは、CGMセンサの装着の不具合や、血糖値グラフの解釈の困難などだった。

 なお、参加した患者の67%がアフリカ系米国人、59%が女性、試験開始前に23%は血糖測定の経験がなく、67%で低血糖が報告されていた。

血糖モニタリングデバイスは高齢の糖尿病患者やその介護者にとって装着や使用などの点で課題がある

出典:レゲンストリーフ研究所、2023年

高齢者の多くはCGMなどを使いこなすのが困難 改善が必要

 「高齢者の多くは、CGMなどのウェアラブル デバイスを使いこなすのが困難であることが示されました。これは、デバイスメーカーが、ウェアラビリティとユーザビリティを改善するうえで課題があることを示唆しています」と、Weiner氏は言う。

 「ただし、ほとんどの参加者は、自分の血糖値など、デバイスに示された数値とその解釈について理解することに、非常に興味を示していました」。

 CGMを活用することにより、低血糖をより明確に識別できた意義も大きい。

 「低血糖には適切に対処する必要があり、今回の研究の参加者の4分の3近くで低血糖が示されたことは非常に懸念されます。高齢者の血糖管理をより直接的かつ効果的に管理するためのモニタリングデバイスが必要であることが示唆されました」としている。

 CGMはリアルタイムでグルコース値の変動などを確認できるが、データをスマートフォンなどのモバイル機器に送信するものが一般的に使用されている。

 しかし、今回の研究でスマートフォンを配布したとき、参加した高齢者のなかでは、スマホを持ち歩かないことがしばしばあった。また、また日中の服薬や行動、症状などについてのプロンプトを無視した参加者も3分の1いたという。

 「ただし、都市部で生活している高齢者の集団では、低血糖が起きた場合に、セーフティネットとなる医療機関でケアを受けられたケースが一般的であり、これはこれまで確認されていなかったことです」と、Weiner氏は付け加えている。

Blood sugar monitoring devices pose wearability and use problems for older adults with diabetes and caregivers (レゲンストリーフ研究所 2023年1月26日)
Continuous Glucose Monitoring and Other Wearable Devices to Assess Hypoglycemia among Older Adult Outpatients with Diabetes Mellitus (Applied Clinical Informatics 2023年1月18日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料