高齢の糖尿病患者の多くはCGMを使いこなすのが困難 高齢者はCGMを使っても75%で低血糖が
高齢の糖尿病患者はCGMやスマホアプリを使いこなせるか?
CGM(持続血糖モニター)や活動量計などのウェアラブル デバイスや、スマートフォンアプリなどを、1型糖尿病あるいは2型糖尿病の高齢者を対象に、低血糖の評価・管理のために使用した場合、これらのツールに対する患者・介護者のウェアラビリティと忍容性には課題があることを、米国のインディアナ大学レゲンストリーフ研究所が明らかにした。
「CGMのデバイスなどのハードウェアとソフトウェアは、糖尿病医療でとくに変革が著しいテクノロジーです。データを読み取るデバイスと、記録・解析・送信するソフトウェアの組合せは日々進歩しています」と、同研究所医療サービス研究センターのMichael Weiner氏は言う。
「しかし、そうした新しいテクノロジーが、現実世界でどのように機能するか、実際に使用する患者などに受け入れやすいものであるかは、最終的に治療による転帰に影響すると考えられる別の問題です」としている。
そこで研究グループは、50~85歳の1型糖尿病あるいは2型糖尿病の患者10人を対象に、CGM、活動量計、自動メディシンボトル、スマートフォンアプリを使用してもらい、血糖値のグラフ表示の理解や、モニタリングの操作など、投薬・行動・症状についてプロンプトを促す研究を行った。
次に、より大きなサンプル(n=70)を対象に、CGMと活動量計を装着してもらい、自動メディシンボトルとアプリを2週間使用してもらい、デバイスなどに関するフィードバックの提供を求めた。
CGMなどを使用した高齢患者の73%で低血糖、42%で重篤な低血糖
その結果、2週間のモニタリング期間に、参加した患者の73%で低血糖(70mg/dL以下)が、42%で重篤な低血糖(54mg/dL未満)が示され、低血糖を経験した患者の多くは、家庭血糖測定でも低血糖が示された。
さらに、参加者のほぼ3分の1で、日中の服薬や行動、症状などについてのプロンプトへの無応答があり、24%で装着していたCGMセンサが外れることがあった。
参加した患者でもっとも一般的にみられた訴えは、CGMセンサの装着の不具合や、血糖値グラフの解釈の困難などだった。
なお、参加した患者の67%がアフリカ系米国人、59%が女性、試験開始前に23%は血糖測定の経験がなく、67%で低血糖が報告されていた。
高齢者の多くはCGMなどを使いこなすのが困難 改善が必要
「高齢者の多くは、CGMなどのウェアラブル デバイスを使いこなすのが困難であることが示されました。これは、デバイスメーカーが、ウェアラビリティとユーザビリティを改善するうえで課題があることを示唆しています」と、Weiner氏は言う。
「ただし、ほとんどの参加者は、自分の血糖値など、デバイスに示された数値とその解釈について理解することに、非常に興味を示していました」。
CGMを活用することにより、低血糖をより明確に識別できた意義も大きい。
「低血糖には適切に対処する必要があり、今回の研究の参加者の4分の3近くで低血糖が示されたことは非常に懸念されます。高齢者の血糖管理をより直接的かつ効果的に管理するためのモニタリングデバイスが必要であることが示唆されました」としている。
CGMはリアルタイムでグルコース値の変動などを確認できるが、データをスマートフォンなどのモバイル機器に送信するものが一般的に使用されている。
しかし、今回の研究でスマートフォンを配布したとき、参加した高齢者のなかでは、スマホを持ち歩かないことがしばしばあった。また、また日中の服薬や行動、症状などについてのプロンプトを無視した参加者も3分の1いたという。
「ただし、都市部で生活している高齢者の集団では、低血糖が起きた場合に、セーフティネットとなる医療機関でケアを受けられたケースが一般的であり、これはこれまで確認されていなかったことです」と、Weiner氏は付け加えている。
Blood sugar monitoring devices pose wearability and use problems for older adults with diabetes and caregivers (レゲンストリーフ研究所 2023年1月26日)
Continuous Glucose Monitoring and Other Wearable Devices to Assess Hypoglycemia among Older Adult Outpatients with Diabetes Mellitus (Applied Clinical Informatics 2023年1月18日)