マイクロプラスチックへの曝露が糖尿病・高血圧・脳卒中と関連
プラスチックの微細な破片であるマイクロプラスチックへの曝露が、慢性疾患のリスクを高める可能性のあることが報告された。糖尿病や高血圧、脳卒中の有病率と有意な関連が認められるという。
米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部のSai Rahul Ponnana氏らが、米国心臓病学会(ACC.25、3月29~31日、シカゴ)で発表した。

マイクロプラスチック(直径1nmから5mmのプラスチック片と定義)は、より大きなプラスチック片が分解する際に、環境中に放出される。たとえば、食品や飲料の包装、建築資材など、さまざまな発生源が身近に存在する。
マイクロプラスチックが拡散した環境で暮らす人々は、飲料水、食物、あるいは空気を通して、マイクロプラスチックにさらされている可能性があり、それが健康リスクとなることを示唆する研究報告が増えつつある。
Ponnana氏らは、米国の東海岸、西海岸、メキシコ湾岸、およびその他、一部の湖岸の地域(沿岸から200m以内)の住民を対象に、水域中のマイクロプラスチック濃度と健康状態との関連性を調査した。なお、マイクロプラスチック汚染は内陸部にも存在しているが、本研究では、マイクロプラスチック濃度のデータが豊富な海岸と湖岸に焦点を当てた。
米国立環境情報センター(NCEI)の2015~2019年のデータを用いて、海底堆積物中のマイクロプラスチック濃度にもとづき、555の地域を「低濃度」(1m2当たり0~200個)から「非常に高濃度」(同4万個以上)に分類。また、2019年の米疾病対策センター(CDC)のデータを用いて、同地域の住民の糖尿病、高血圧、脳卒中、がんの罹患率を把握した。機械学習モデルを用いて、これらの疾患の有病率を推定したうえで、マイクロプラスチック濃度と有病率の関連性を検討。解析に際しては、大気汚染レベル、世帯収入、雇用率など、154項目の社会・環境要因の影響を考慮した。
その結果、マイクロプラスチック濃度は、糖尿病(r=0.3)、高血圧(r=0.24)、脳卒中(r=0.26)の有病率と、正の相関関係にあることが分かった。一方、がんの有病率とマイクロプラスチック濃度との間には、負の相関(r=-0.16)が見られた。
分散分析から、糖尿病(F=12.07)、高血圧(F=7.351)、脳卒中(F=8.798)、がん(F=3.986)は、いずれもマイクロプラスチック濃度との有意な関連が認められた。またマイクロプラスチック濃度は脳卒中の有病率の有意な予測因子であり、eXtreme Gradient Boostingモデルにもとづく解析では、マイクロプラスチック濃度が高いほど脳卒中のリスクが上昇するという用量反応関係の存在が示唆された。
この結果にもとづきPonnana氏は、「環境はわれわれの健康、特に心血管の健康に非常に重要な役割を果たしている。環境を大切にするということは、つまり、われわれ自身を大切にするということだ」と述べている。
[HealthDay News 2025年4月2日]
Copyright ©2025 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock