日本高血圧学会「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」 6つのデジタル技術の血圧低下作用のエビデンスを示す
日本高血圧学会は、「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」を策定し、同学会サイトで通常版と要約版の公開を開始した。
指針では、6つのデジタル技術[家庭血圧モニタリング、ウェアラブルデバイス、尿中ナトカリ比、スマートフォンアプリ、遠隔医療・保健指導およびAI]の血圧低下作用について、現時点でのエビデンスを示した。高血圧の管理について、予防・健康増進の分野で回答が必要な課題として、ヘルスケアクエスチョン(HQ)形式でまとめてある。
指針は、一般人の健康づくりや高血圧の人の血圧管理で、医学的根拠にもとづいた適切なデジタル技術の選択の一助となることを想定しているという。産業保健・地域保健・一般診療の現場などでの活用を想定している。

血圧管理にデジタル技術を活用 医学的根拠にもとづき選択
日本高血圧学会は、「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」を策定し、同学会サイトで通常版と要約版の公開を開始した。
指針は、2022年度AMED事業「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備事業)」としてまとめられたもの。指針の作成委員会の委員長は、有馬久富・福岡大学医学部衛生・公衆衛生学教授。
作成委員会によると、120/80mmHgを超えて血圧が高くなるほど、脳心血管病(脳卒中、冠動脈疾患、心不全など)、慢性腎臓病、認知症などのリスクは上昇する。この関連は、働き盛りの中壮年者で顕著で、高血圧は脳心血管病の最大の危険因子となっている。
生活習慣を修正することにより、血圧を低下させ、高血圧を予防することができる。エビデンスが確立されている予防手段は、(1) 食事、(2) 運動、(3) 適正体重の維持、(4) 節酒、(5) 禁煙、(6) ストレス管理など。
しかし、高齢化が進む日本では高血圧者の数は増加しており、エビデンスが十分に活かされておらず、日本の高血圧者のうち、72%が未治療あるいは血圧管理不良という現状がある。
日本で脳心血管病の予防戦略を構築するために、すべての国民に生活習慣の修正を働きかけるポピュレーション戦略と、すべての高血圧者の血圧を管理する高リスク戦略を組み合わせた対策が必要で、そのための有効なツールとして、健康づくりおよび医療でのデジタル技術(ウェアラブルデバイス、スマートフォンアプリ、人工知能[AI]など)の活用が期待されている。
ただし、血圧低下作用が実証されたデジタル技術がある一方、科学的な有効性が実証されないまま使用されているデジタル技術もある。そこで、日本高血圧学会は、この「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」を作成した。
指針は、一般人の健康づくりや高血圧の人の血圧管理で、医学的根拠にもとづいた適切なデジタル技術の選択の一助となることを想定しているという。また、産業保健・地域保健・健診・一般診療の現場での保健指導や診療に活用されることも想定している。
デジタル機器を効果的に正しく使う能力(デジタルリテラシー)に個人差があるため、すべての人にとって使いやすくアクセスしやすい「誰1人取り残さない」デジタル技術が開発されていくことも期待されているという。
「本指針が、国民の皆様の健康づくりおよび血圧管理に役立つとともに、日本発のヘルスケア領域でのデジタル技術の発展につながることを期待いたします」、同委員会では述べている。