慢性腎臓病(CKD)患者の食事療法 「低タンパク質ごはん」はアドヒアランスを向上し尿タンパクも減少 新潟大学
低タンパク質ごはんが食事療法でのアドヒアランスを向上 尿タンパク量も減少
食事療法は、慢性腎臓病(CKD)でも重要な治療法のひとつとなっており、なかでもタンパク質制限はその中心とされている。しかし、その方法論は確立しておらず、低タンパク質ごはんの有用性も明らかではない。
そこで新潟大学は、亀田製菓、サトウ食品、バイオテックジャパン、ホリカフーズとの共同研究により、「慢性腎臓病患者における治療用特殊食品(低タンパク質米)の使用がタンパク質摂取量に与える効果に関する多施設共同無作為化比較試験」を実施。
その結果、低タンパク質ごはんの使用が、CKD患者の食事療法での、タンパク質制限のアドヒアランスを向上させるだけでなく、腎障害の程度を示す尿タンパク量を減少させたことを明らかにした。
ステージG3aA2~G4のCKD患者に、4週毎の栄養指導を行い、低タンパク質ごはん(2回/日以上)を使用したところ、タンパク質摂取量は、24週時点で0.11g/kg標準体重/日より減少した。尿タンパク量も0.30g/日減少した。
現在、低タンパク質ごはんを用いた長期試験を行っており、腎機能低下抑制効果を検証していく予定としている。
研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター病態栄養学講座の細島康宏特任准教授、蒲澤秀門特任助教らによるもの。研究成果は、米国腎臓学会編の「Kidney360」に掲載された。
タンパク質制限の遵守は難しい タンパク質制限のエビデンスは不足
CKDの進行は一般的に、薬物療法をはじめとする現状の診療のみでは抑制することが困難なことが多く、CKD患者での食事療法の重要性は見直されてきている。
一方で、CKD患者での食事療法、とくにその中心となるのはタンパク質制限についてのエビデンスは不足している。さらには、タンパク質制限が、腎機能低下の速度を抑制するか否かについての結論も得られていない。
問題点として、これまで行われてきた臨床研究では、示された「たんぱく質摂取量」が遵守されていないものが多く、食事療法の臨床研究が極めて困難であることが挙げられる(日常診療でもタンパク質制限の遵守は難しい場合が多い)。
そこで研究グループは、CKD患者で推奨されるタンパク質制限食を遂行するうえで、治療用特殊食品(低タンパク質米)すなわち低タンパク質ごはんの使用が、そのアドヒアランスの向上に有効であるかを検証する本臨床研究を行った。
低タンパク質ごはん使用によりタンパク質摂取量はより減少 尿タンパク量は0.30g/日減少
新潟大学および7関連病院のCKD患者(ステージG3aA2~G4)102人を対象に、24週間、4週毎の栄養指導のみを行う群(非使用群)と、加えて低タンパク質ごはん(2回/日以上)を使用する群(使用群)に無作為に分け、タンパク質制限(0.7g/kg標準体重/日)を遂行するうえでの低タンパク質ごはんの有効性を検討した。タンパク質摂取量の推算には蓄尿検査の結果を用いマロニーの式により算出した。
その結果、タンパク質摂取量は、低タンパク質ごはん非使用群(49/51例完遂)で0.99gから0.91/kg標準体重/日に、低タンパク質ごはん使用群(50/51例完遂)では0.99gから0.80g/kg標準体重/日に減少した。開始時の摂取量で調整したタンパク質摂取量は、使用群が非使用群に比して24週時点で0.11g/kg標準体重/日減少した。
2群間での尿タンパク量の変化は、24週の時点で非使用群が0.07g/日、使用群は-0.30g/日と、明らかに使用群で減少していた。
「今後は、より長期の検討での、低タンパク質ごはんを用いたタンパク質制限が腎機能低下速度を抑制するか否かについての検証が必要と考えられます」と、研究グループでは述べている。
研究グループは、2019年から「慢性腎臓病患者での治療用とく殊食品(低タンパク質米)の使用が腎機能低下速度に与える効果に関する多施設共同無作為化比較試験(RICE2研究)」を開始しており、最終的に100人以上のCKD患者の同意が得られ、現在も研究を継続しているという。
なお研究は、2014~2016年度の、新潟県医療用途食品機能性研究事業補助金採択事業の一環として行われた。
新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター病態栄養学講座
Efficacy of low-protein rice for dietary protein restriction in CKD patients: A multicenter randomized controlled study (Kidney360 2022年11月24日)