GLP-1受容体作動薬がアルツハイマー病リスクを低下させる可能性 2型糖尿病患者109万人超を検証

2024.10.30
 糖尿病および肥満症の治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)が、2型糖尿病患者のアルツハイマー病リスクを低下させる可能性があると、米ケース ウェスタン リザーブ大学が発表した。

 セマグルチドは、他のGLP-1受容体作動薬を含む糖尿病治療薬と比較して、2型糖尿病患者のアルツハイマー病の初回診断リスクを40~70%低減させることが示された。

セマグルチドが処方された糖尿病患者はアルツハイマー病のリスクが著しく減少

 糖尿病および肥満症の治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)が、2型糖尿病患者のアルツハイマー病リスクを低下させる可能性があると、米ケース ウェスタン リザーブ大学が発表した。

 研究は同大学医学部創薬AIセンターの所長であるRong Xu教授らによるもの。研究成果は、「Alzheimer s & Dementia」に掲載された。

 研究グループは今回、米国の約1億1,600万人の患者の電子医療記録(EHR)の全国データベースにもとづき、ランダム化臨床試験を模倣したエミュレーション ターゲット トライアルを実施。

 アルツハイマー病の診断歴のない2型糖尿病患者109万4,761人を対象に、7件のターゲット トライアルをエミュレートした。アルツハイマー病の初回診断は3年の追跡期間内に行われ、Cox比例ハザードモデルとカプラン マイヤーモデルを使用して解析した。

 その結果、セマグルチドが処方された患者は、他のGLP-1受容体作動薬を含む他の7種類の糖尿病治療薬のいずれかが処方された患者と比較して、アルツハイマー病のリスクが著しく低いことが示された。

 セマグルチドは、アルツハイマー病の初回の診断リスクの有意な低下と関連しており、インスリンとの比較でもっとも強く[ハザード比(HR) 0.33、95% CI 0.21~0.51]、他のGLP-1受容体作動薬との比較でもっとも弱く[HR 0.59、同 0.37~0.95]、この結果は肥満、性別、年齢など、さまざまなサブグループで一貫していた。

 「前臨床研究では、セマグルチドが神経変性や神経炎症を防ぐ可能性が示唆されているが、今回の新しい研究は、セマグルチドが2型糖尿病患者のアルツハイマー病の発症と進行を緩和するうえで、潜在的な臨床的利益をもたらすことを裏付ける現実的なエビデンスを提供している」と、Xu氏は述べている。

 「ただし、研究結果はセマグルチドがアルツハイマー病を予防する可能性を示すものであっても、確固とした因果関係を導き出すのは難しいという限界がある。今後、ランダム化比較臨床試験を通じて、この疾患の潜在的な治療薬となることを調査する必要がある」。

 「米国アルツハイマー病協会によると、65歳以上の米国人約700万人がアルツハイマー病を発症しており、その死亡者数は乳がんと前立腺がんによる死亡者数を合わせた数よりも多く、全米で7番目に多い死因となっている」としている。

 なお今回の研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立老化研究所(NIA)と国立先端トランスレーショナル サイエンスセンターにより助成を得て実施された。

Popular diabetes and weight-loss drug may reduce risk of Alzheimer’s disease (ケース ウェスタン リザーブ大学 2024年10月24日)
Associations of semaglutide with first-time diagnosis of Alzheimer's disease in patients with type 2 diabetes: Target trial emulation using nationwide real-world data in the US (Alzheimer s & Dementia 2024年10月24日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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