糖尿病患者の「五十肩」リスクは3.69倍 診察時には肩の痛みを確認する必要も?

2023.02.16
糖尿病が五十肩のリスク因子の可能性

 糖尿病が五十肩(frozen shoulder)のリスクを高める可能性を示唆する研究結果が、「BMJ Open」に1月4日掲載された。英キール大学のBrett Paul Dyer氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、糖尿病でない人を基準とするオッズ比が3倍を超えるという。

 五十肩の病因の詳細は不明だが、甲状腺機能障害や心血管代謝疾患などとの関連のあることが報告されており、また糖尿病患者の五十肩の有病率は13.4%とするメタ解析の結果がある。ただし、糖尿病が五十肩のリスク因子なのか否かという点は、十分に明らかになっているとは言えない。これを背景としてDyer氏らは、糖尿病の発症と五十肩の発症の時間的関係を検討するという目的で、過去の長期観察研究を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を行った。

 MEDLINE、Embaseなどの文献データベースを用いて2019年1月に検索を実施し、2021年6月に追加された報告の有無を確認。その結果、6件の症例対照研究と2件のコホート研究が抽出された。このうち米国と台湾からの報告が各2件で、そのほかは、中国、韓国、オーストラリア、イスラエルからの報告が各1件だった。糖尿病の病型について報告していた研究は1件のみであり、その研究では糖尿病患者群の5.8%が1型糖尿病と記されていた。7件の報告はバイアスリスクが高いと判定され、残りの1件は中程度のバイアスリスクだった。

 症例対照研究6件の研究参加者数は合計5,388人であり、糖尿病患者と非糖尿病者で五十肩のリスクに有意差なしと報告していたものは1件で、ほかの5件は糖尿病患者の方がハイリスクの可能性があると結論付けていた。メタ解析の結果、糖尿病患者での五十肩発症は非糖尿病者の3.69倍であることが分かった〔オッズ比3.69(95%信頼区間2.99~4.56)〕。

 2件のコホート研究は、いずれも台湾からの報告であり、ともに糖尿病が五十肩の発症と関連していることを示していた。ハザード比は1.32(同1.22~1.42)と1.67(同1.46~1.91)だった。

 これらの結果にもとづき著者らは、「糖尿病患者は五十肩を発症する可能性が高いと言え、臨床医は定期的な診察の際に、患者が肩の痛みを感じていないかを確認したほうが良いのではないか。そのような質問によって五十肩を早期に診断し、疼痛緩和と関節機能の維持のための介入の機会とすることが可能となる」と述べている。なお、本研究の限界点として、交絡因子が十分に評価されていない研究が多いことを指摘し、「糖尿病と五十肩の関連の強さを確認し、その関連のメカニズムを理解するために、より質の高い研究が求められる」と付け加えている。

[HealthDay News 2023年1月30日]

Copyright ©2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料