セマグルチドが末梢動脈疾患(PAD)を有する糖尿病患者の歩行距離と生活の質を改善 米国心臓病学会

2025.04.08

 ノボ ノルディスクは、末梢動脈疾患(PAD)を有する成人の2型糖尿病患者での週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬であるOzempic(セマグルチド1.0 mg)の効果を検討する第3b相PADアウトカム試験であるSTRIDE試験の詳細な結果を発表した。

 Ozempic(週1回皮下投与セマグルチド1.0mg)は、末梢動脈疾患(PAD)を有する成人2型糖尿病患者で、プラセボと比較し、最大歩行距離を13%延長したことが示された。

 全世界で約2億3,000万人が重度のアテローム動脈硬化性心血管疾患であるPADを有しており、2型糖尿病はPADの主要リスク因子のひとつであり、PADを有する患者の3人に1人が2型糖尿病に罹患しているという報告がある。

Ozempic(セマグルチド1.0mg)が末梢動脈疾患(PAD)を有する糖尿病患者の歩行距離と生活の質を改善ACC2025

 第3相試験から得られたこの新たなデータは、米国のシカゴで開催された米国心臓病学会(ACC)のLate-breakingセッションで発表されると同時に、「The Lancet」に掲載された。

 STRIDE試験は、Ozempicの販売名で市販されている週1回投与のセマグルチド1.0mgが歩行能に及ぼすベネフィットを評価する二重盲検、無作為割り付け、プラセボ対照、第3b相試験で、GLP-1受容体作動薬のPADを対象とした唯一の機能的アウトカム試験としている。

 試験には、歩行時の下肢痛をともなう症候性PADを有する2型糖尿病患者792例が組み入れられた。主要評価項目は、プラセボ群と比較したセマグルチド群での52週時でのトレッドミル検査での最大歩行距離。

 その結果、主要評価項目が達成され、セマグルチド1.0mg投与では、52週時にプラセボ投与と比較し、最大歩行距離で、13%の改善をもたらし、平均治療間差は39.9メートルだった。

 さらに、52週時の無痛歩行距離、52週時の健康関連の生活の質(Vascular Quality of Life Questionnaire-6)、57週時の最大歩行距離など、評価した検証的副次アウトカムのすべてでプラセボに対する優越性が示されたとしている。

※歩行速度3.2 km/h、傾斜12%で実施したトレッドミル検査にて評価

 コロラド大学医学部 心臓血管研究科 部長でSTRIDE試験の治験責任医師であるマークPボナカ氏は次のように述べている。
 「末梢動脈疾患(PAD)は、重度な症状、身体的な制約や生活の質の悪化を引き起こすことがあり、なかには郵便物を取りに行く程度の短い距離を歩くことさえ困難な患者がいる。PADと糖尿病を有する患者は、細小血管への影響というさらに難しい病態を抱え、血行再建術をはじめとする治療法にとくに制限が生じる。セマグルチド1.0mgはこの20年以上で、心血管代謝系および心血管アウトカムを改善するとともに、PADと2型糖尿病を有する人々の大きなアンメットニーズに対応し、歩行能および生活の質に重要な改善を示したはじめての薬剤だ」としている。

 STRIDE試験の安全性の結果は、週1回皮下投与セマグルチドの既に確立されている安全性および忍容性プロファイルと一致しており、3,300万人・年を超える曝露での長期安全性データにより裏付けられている。重篤な有害事象の報告例はセマグルチド群(74例、19%)でプラセボ群(78例、20%)より少なくなかった。治験薬との因果関係があると判断された重篤な有害事象の報告は、セマグルチド群で2例(1%)、プラセボ群で2例(1%)だった。治験薬との因果関係の可能性があると判断された重篤な有害事象の報告は、セマグルチド群で3例(1%)、プラセボ群で4例(1%)だった。セマグルチドまたはプラセボの永続的な投与中止に至った重篤な有害事象の例数はセマグルチド群(11例、3%)でプラセボ群(13例、3%)より少なく、死亡に至った重篤な有害事象はセマグルチド群で3例(1%)、プラセボ群で8例(2%)だった。なお、死亡に至った重篤な有害事象で治験薬との因果関係があると判断されたものはなかった。

 STRIDE試験の結果にもとづき、ノボ ノルディスクはOzempicの添付文書の改訂を目的とした申請を欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)に提出し、決定は2025年中にが下される見込みとしている。

 Ozempic(セマグルチド皮下注0.25mg、0.5mg、1.0mg、2.0mg)は、週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬であり、2型糖尿病の成人における血糖管理改善のための食事および運動療法の補助、また心疾患の既往を有する成人の2型糖尿病患者における主要心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、死亡)のリスク低減を適応としている。Ozempicは現在、75ヵ国で市販されているとしている。

Semaglutide and walking capacity in people with symptomatic peripheral artery disease and type 2 diabetes (STRIDE): a phase 3b, double-blind, randomised, placebo-controlled trial (Lancet 2025年3月29日)
セマグルチド 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

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