中年成人の肥満解消にオンラインの生活指導が有用 専門家によるサポートに加えて患者同士の交流も効果的

2024.03.07
 スマホアプリなどを活用したオンラインの生活指導や社会的サポートが、肥満や過体重の35~55歳の中年成人の減量やメタボ解消に有用であることが明らかになった。

 「オンラインのプログラムを利用し、専門家によるアドバイスやサポートを受け、自分と同じように治療に取り組む仲間をつくり交流すれば、より幸せで健康的な生活をおくれるようになる可能性がある」と、研究者は述べている。

オンラインの生活指導や社会的サポートは有用

 スマホアプリなどを活用したオンラインの生活指導や社会的サポートが、肥満や過体重の35~55歳の中年成人の減量やメタボ解消に有用であることが、米国のミズーリ大学の研究で明らかになった。

 肥満は、2型糖尿病・高血圧・心臓病・脳卒中・肝臓病・がん・睡眠時無呼吸症候群など、深刻な健康上の障害を引き起こす。米国では肥満は、予防可能な死亡原因として、喫煙に次ぐ第2位にあげられている。米国では、20歳以上の成人の42.5%が肥満だという。

 ウォーキングなどの運動の習慣化や、食事スタイルの改善、体重管理など、健康増進のために目標を立てる人は多いが、その多くは実行できていない。

 「肥満のある人は、肥満に関連した身体的な不調だけでなく、うつ病のリスクが高く、自尊心の低下や社会的孤立などを経験することも多く、メンタルヘルス不調のリスクが高いことが知られている」と、同大学の健康科学部のマンスー ユ教授は言う。

 「しかし、オンラインのプログラムを利用し、専門家によるアドバイスやサポートを受け、自助グループで仲間をつくり交流すれば、より健康的な生活をおくれるようになる可能性がある」としている。

オンライン指導を成功させるための3つの要素

 研究グループは今回、減量のためのオンラインによる生活指導を実施した研究を解析した。過体重または肥満の中年成人を対象に、2000年~2019年の20年間に実施され、6ヵ月以上の介入を行い70%以上が継続した、ランダム化比較試験(RCT)を含む、29件の研究を解析した。

 その結果、オンラインの生活指導で成功しやすいのは、

  1. 生活改善のための情報を提供し、食事や運動などの自己管理のためのツールを提供する
  2. 参加者がオンラインで自分と同じように減量に取り組んでいる仲間をみつけ、情報を共有できるグループチャットの機能がある
  3. 医療の専門家が参加者の疑問や質問に答えることができる

という、3つの要素を備えたものであることが判明した。

 さらに、地方に住む参加者のために、アクセスしやすく、柔軟性や利便性が高く、時間とコストが少なくて済むプログラムが効果的であることも示された。

生活改善プログラムを成功させるための5つヒント

 減量や健康増進のための生活改善プログラムを成功させるために、ユ教授は次の5つのことがヒントになるとしている。

  1. 食事や運動などの生活スタイルの改善に取り組んでいることを、家族・友人・恋人・同僚に話し共有する。
  2. ウォーキングなど、取り組みやすい運動や身体活動をみつけて、日課に組み込む。
  3. オンラインで、生活改善の取り組みの進捗について知らせ、アドバイスや励ましの言葉をもらう。
  4. 自分と同じように健康増進や減量に取り組んでいる仲間をみつけ、たとえば毎日どれだけ歩いたかといった情報を共有し、励ましあう。
  5. 食事や運動などについて、分からないことや上手くいかないことがあれば、専門家に相談しアドバイスをもらう。

オンラインの生活指導に肥満やメタボを改善する効果

 減量や体重管理を支援するように設計されたオンラインの生活指導プログラムは効果的という研究を、英国のインペリアル カレッジ ロンドンも発表している。

 研究は、米国・欧州・東アジア・オーストラリアなどで行われた、計1,884人の参加者を対象に実施された12件の研究を解析したもの。オンラインの生活指導プログラムの利用により、全体で体格指数(BMI)の0.64の減少を達成した

 「ソーシャルメディアを使用した介入は、いつでもどこでも日常で使用でき、効果的かつ実用的だ。対人関係による介入や支援に比べて、コストがはるかに安くなる可能性もある」と、同大学で医療政策を研究しているフータン アシュラフィアン氏は言う。

 「ソーシャルメディアを効果的に活用すると、指導者は同時に多くの人にアドバイスやサポートを提供できるようになり、利用者はコミュニティの一員であるという感覚を得ることも可能となる」としている。

 ただし、潜在的なプライバシーの問題や、患者がスマートフォンアプリの操作やインターネットに通じている必要があるなど、マイナス面も考えられるため、すべての人に適しているわけではないとも指摘している。

 「肥満やメタボの改善や治療にソーシャルメディアを利用することで、参加者はより積極的になり、生活改善や治療に主体的に参加できるようになると期待される。これが肥満に対する唯一の解決策ではないにしても、戦略のひとつの要素として検討する必要がある」としている。

Mizzou researcher reveals two key factors for online weight loss success (ミズーリ大学 2024年1月24日)
Effectiveness of Different Online Intervention Modalities for Middle-Aged Adults with Overweight and Obesity: A 20-Year Systematic Review and Meta-analysis (Journal of Prevention 2023年12月20日)
Social networking can help people lose weight (インペリアル カレッジ ロンドン 2014年9月8日)
Social Networking Strategies That Aim To Reduce Obesity Have Achieved Significant Although Modest Results (Health Affairs 2014年9月)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料