視覚障害の原因疾患の全国調査 糖尿病網膜症は第3位の10.2% 1位の緑内障は40%超
緑内障の割合が急増 視覚障害認定基準改正が影響
岡山大学は、2019年度に視覚障害の実態の全国調査を実施し、視覚障害の原因疾患の第1位は「緑内障」(40.7%)、第2位は「網膜色素変性」(13.0%)、第3位は「糖尿病網膜症」(10.2%)、第4位は「黄斑変性」(9.1%)であることを明らかにした。
対象となったのは、新規に視覚障害者と認定された1万6,504人のデータ。認定者の多くは高齢者で、年齢の割合は、80~89歳が29.6%、70~79歳が28.2%、60~69歳が15.3%だった。
2015年度から順位に変化はないものの、緑内障の割合は28.6%から40.7%へ急増している。男女別では、男性が42.6%、女性が38.5%で、いずれも緑内障の割合が最多になった。その背景として、2018年に23年ぶりに実施された視覚障害の認定基準改正があるとみられる。
なお、もっとも一般的な視覚障害の等級は2級(40.8%)で、5級(21.2%)、1級(17.0%)と続いた。視覚障害の1級と2級の認定者数は大幅に増加し、6級の認定者数は減少した。
視覚障害は、視覚に関連した機能障害の総称で、身体障害者福祉法に則って、視力や視野の障害の程度に応じて認定される。
1988年から計4回の視覚障害認定の全国調査が行われており、その第4回目は2015年度に同大学らの研究グループが、日本ではじめて全国すべての福祉事務所を対象に実施した全数調査だった。今回の調査は第5回目の調査で、全国全数調査としては第2回目となる。新規に視覚障害認定を受けた18歳以上を対象に、年齢・性別・原因疾患・等級を調査し解析した。
研究は、岡山大学学術研究院医歯薬学域(眼科学)の森實祐基教授と的場亮助教、鹿児島大学大学院医歯薬学総合研究科(眼科学)の坂本泰二教授らの研究グループ(厚生労働省、難治性疾患等政策研究事業、網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班)によるもの。研究成果は、「Japanese Journal of Ophthalmology」にオンライン掲載された。
「身体障害のデータを管理する福祉事務所は全国に161あり、今回はじめて回答率100%を達成し、精度の高い調査を行うことができました」と、的場助教は述べている。
「緑内障は末期まで症状を自覚しにくく、一度進行してしまうと治療をしても視機能を回復することが難しい病気です。そのため、40歳を過ぎたら自覚症状がなくても目の検診を受けることが重要です。また、すでに緑内障と診断されている方は、今回の基準改正によって新たに視覚障害に認定され、必要な福祉サービスを受けられる可能性があります。担当医師にご相談されることをお勧めします」としている。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 眼科学
A nationwide survey of newly certified visually impaired individuals in Japan for the fiscal year 2019: impact of the revision of criteria for visual impairment certification (Japanese Journal of Ophthalmology 17 April 2023年4月17日)