肥満形成クラスターに属する2型糖尿病関連の遺伝子群が冠動脈疾患・末梢血管障害・糖尿病性腎症に関与
2型糖尿病の病態形成に関わる遺伝子クラスターとその病的意義を解明
久留米大学などは、2型糖尿病の病態生理に関わる遺伝子クラスターとその病的意義を包括的アプローチにより解明し、肥満形成クラスターに属する2型糖尿病に関連する遺伝子群が、冠動脈疾患、末梢血管障害、糖尿病性腎症の発症などに関与することを明らかにした。
研究グループは今回、2型糖尿病の42万8,452例を含む、253万5,601人(欧州系以外が39.7%)のゲノムワイド関連データを解析した。
さらに、2型糖尿病の3万288例を含む、多様な祖先をもつ27万9,552人のクラスター特異的分割ポリジェニックスコアを構築し、2型糖尿病に関連する血管転帰との関連を調べた。
この国際共同研究は、久留米大学医学部医化学講座の山本健教授、横田充弘客員教授らによるもの。研究成果は、「Nature」に掲載された。
ポリジェニックリスクスコア(多遺伝子スコア)は、多遺伝子性をもつ疾患や体質を、多数の遺伝子を考慮して評価したスコア。多遺伝子性疾患に関係する遺伝子は、単体では影響力が小さいが、その変異が集まり影響しあうことで、疾患リスクや体質に影響を与えると考えられている。
研究グループはこれまで、2型糖尿病の発症および病態形成に関わる遺伝子の探索と病態解明を目的に、国内外の研究者と共同研究を展開し、「日本人における2型糖尿病関連遺伝子KCNQ1の同定」(Nat. Genet. 2008、40:1092-1097)、東アジア人における2型糖尿病関連遺伝子の解明」(Nat. Genet. 2011; 44: 67-72、および Nature 2020、582: 240-245.)、「2型糖尿病関連遺伝子の人種間多様性」(Nat. Genet. 2014; 46: 234-244、および Nat. Genet. 2022、54: 560-572.)などを報告してきた。
今回の研究では、これをさらに発展させ、複数人種にわたる約250万人の解析結果をもとに2型糖尿病の発症および病態形成に関わる611遺伝子を抽出し、これらを重複しない機能・表現型クラスターに分類し、クラスター特異的ポリジェニックスコアをもとに他の病態の発症リスクを検討した。
「今回の発見は、2型糖尿病の発症と進行を促進する病因の不均一性を解明するために、多祖先のゲノム全体の関連データを単一遺伝子のエピゲノミクスと統合することの価値を示している。これにより、遺伝情報にもとづく糖尿病治療へのアクセスを最適化し、先進的な治療法開発への道を拓けると期待される」と、研究者は述べている。
久留米大学医学部医化学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/ikagaku/ Genetic drivers of heterogeneity in type 2 diabetes pathophysiology (Nature 2024年2月19日) https://www.nature.com/articles/s41586-024-07019-6