糖尿病性神経障害による疼痛が神経除圧術で改善 二重盲検比較試験を実施

2024.04.10
糖尿病性神経障害による疼痛が神経除圧術で改善

 糖尿病性末梢神経障害(DPN)による下肢疼痛が神経除圧術により軽減されること、ただし、その効果にはプラセボ効果も関与していることを示すデータが報告された。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのShai M. Rozen氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Surgery」に2月8日掲載された。

 現在のところ、DPNによる下肢疼痛に対する根治的な治療法は確立されていない。神経除圧術による疼痛軽減の報告はあるが、そのエビデンスは十分でない。これを背景としてRozen氏らは、無作為化二重盲検・同一患者内シャム手術対照試験により、神経除圧術の有効性を検討した。

 DPNによる下肢疼痛を有する患者2,987人をスクリーニング対象とし、過去1年以上にわたり標準的な治療が行われているにもかかわらず疼痛を十分コントロールできていない、18~80歳の患者78人を登録。全体を無作為に二分し、1群には神経除圧術を施行、他の1群は疼痛治療薬の投与を継続する経過観察群とした。

 また神経除圧術施行群をさらに無作為に二分したうえで、1群は右脚、他の1群は左脚に神経除圧術を行い、それぞれの反対側の脚は切開のみのシャム手術(偽手術)とした。評価項目は11点のリッカートスコアによる疼痛の程度として、術後12ヵ月と56ヵ月の時点で評価した。

 術後12ヵ月時点では、神経除圧術施行群(40人)は疼痛スコアが有意に低下し、経過観察群(37人)は有意な変化がなく、両群を比較すると前者のスコアが有意に低かった〔平均差-4.46(P<0.0001)〕。また、神経除圧術施行群において、シャム手術を行った脚も神経除圧術を行った脚と同等に疼痛レベルが改善されていた。よって、この時点で認められた疼痛軽減には、プラセボ効果が関与していると考えられた。

 術後56ヵ月時点では経過観察群(14人)は疼痛スコアが上昇し、神経除圧術施行群との差が拡大していた〔平均差が右脚神経除圧術施行群(20人)は-7.65、左脚神経除圧術施行群(16人)は-7.26(いずれもP<0.0001)〕。また、神経除圧術施行群において、実際に神経除圧術を行った脚とシャム手術を施行した脚とで疼痛スコアの平均差が1.57であり、前者の方が有意に低値だった(P=0.0002)。つまり、神経除圧術はDPNによる下肢疼痛に対して、長期的には効果をもたらすと考えられた。

 著者らは、「DPNによる下肢疼痛に対する神経除圧術の施行は、疼痛の軽減と関連していた。ただし、本研究で認められた有効性にはプラセボ効果が関与している可能性があるため、神経除圧術の決定的なエビデンスとは言えない。よって神経除圧術のメリットの確認のため、さらなる研究が必要とされる」と述べている。

[HealthDay News 2024年3月28日]

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