新型コロナ感染により糖尿病リスクが上昇 男性や重症患者でより顕著 糖尿病発症率は男性では4.8%

2023.04.27
 新型コロナウイルス感染症に感染した個人で糖尿病の発症リスクが17%高く、とくに男性や新型コロナが重症化した患者で、糖尿病リスクが高いことが、約63万人を対象とした調査で明らかになった。

 新型コロナの感染は糖尿病のリスクの大幅な増加と関連しており、SARS-CoV-2感染に起因する糖尿病の発症例は3%~5%だった。

 糖尿病の発症リスクは、SARS-CoV-2に曝露されたグループでは17%高く、男性では22%高く、集中治療室(ICU)の使用者で3.3倍に上昇した。

 新型コロナ感染に起因する糖尿病発症率は、全体で3.41%、男性で4.75%としている。

新型コロナの重症度の高い患者で糖尿病の発症リスクはより上昇

 研究は、カナダのブリティッシュコロンビア大学公衆衛生学部およびブリティッシュコロンビア州疾病対策センターのZaeema Naveed氏らによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。

 研究グループは、同州の集団ベースのコホート研究の対象となった、2020年1月1日~2021年12月31日にPCRによるDNA複製過程をリアルタイムに測定するRT-PCRによるSARS-CoV-2の検査を受けた合計62万9,935人を対象に解析した。解析は2022年1月14日~2023年1月19日まで実施した。

 主な目的は、SARS-CoV-2検査の検体採取日から30日以上経過してから発生した糖尿病の症例を特定すること。通院、入院記録、慢性疾患登録、糖尿病治療薬の処方にもとづき識別し、検証済みのアルゴリズムを使用して解析した。

対象者の年齢の中央値は32歳(25.0~42.0歳)で、51.2%が女性だった。うち12万5,987人がSARS-CoV-2に曝露され、50万3,948人が曝露されていなかった。

 追跡期間の中央値は257日(102~356日)で、糖尿病の発症が観察されたのは、曝露グループで0.5%(608人)、未暴露グループで0.4%(1,864人)だった。

 10万人年あたりの糖尿病発症率は、曝露グループで672.2(95%CI 618.7~725.6)と、未曝露グループで508.7(95%CI 485.6~531.8)になった。

 糖尿病の発症リスクは、曝露グループは未曝露グループに比較して17%高く(HR 1.17、95%CI 1.06~1.28)、男性が女性よりも22%高く(調整済みHR 1.22、95%CI 1.06~1.40)、集中治療室(ICU)の使用者で高く(HR 3.29、95%CI 1.98~5.48)、入院者で高かった(HR 2.42、95%CI 1.87~3.15)。

 SARS-CoV-2感染に起因する糖尿病発症率は、全体で3.41%(95%CI 1.20%~5.61%)、男性で4.75%(95%CI 1.30~8.20%)となった。

 「男性で糖尿病発症率が高いのは、比較的、長期にわたり体を防御する役割を担うSARS-CoV-2 IgG抗体の血中濃度が、男性よりも女性で高いなど、性特異的な免疫応答が原因となっている可能性がある」と、研究者は指摘している。

 さらに、「新型コロナによる入院およびICU使用といった重症度の高い患者に限定した場合、糖尿病の発症リスクはより大きく増加し、男性患者と女性患者の両方に有意な関連性があることも観察された。これらの結果は、過去の調査報告とも一致している」としている。

 米国退役軍人省(VA)の全国データベースを使用した過去の調査では、30日以上生存した新型コロナサバイバーでは対照群と比較して、352日間の追跡により糖尿病を発症するリスクが40%上昇したことが示されている(HR 1.40、95%CI 1.36~1.44)。

 ただし、この調査では対象となったのが主に男性で、年齢の中央値が高かった。今回の調査では、集団の年齢と性別はより多様であり、過体重や肥満の有病率にも差異があることに注意する必要があるとしている。

 さらに、今回の研究では、インスリン依存例と非依存例を区別したところ、新型コロナは非インスリン依存例のみに関連していた。ただし、このサンプルではインスリン依存性糖尿病のイベント数が少なく、過去の調査は国際疾病分類(ICD10)にもとづき、糖尿病のタイプにより1型と2型の分類を行っているものが多く、単純な比較はできないとしている。

Association of COVID-19 Infection With Incident Diabetes (JAMA Network Open 2023年4月18日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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