MR拮抗薬「ケレンディア錠」 米国糖尿病学会がグレードAで推奨 「糖尿病の標準治療2022」を改訂
米国糖尿病学会(ADA)が「糖尿病の標準治療2022」を改訂
バイエル薬品は、米国糖尿病学会(ADA)「糖尿病の標準治療2022(the Standards of Medical Care in Diabetes - 2022)」の改訂で、2型糖尿病を合併するCKD(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応を持つ国内唯一の非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬「ケレンディア錠」(一般名:フィネレノン)が、2型糖尿病を合併するCKD患者での心血管系アウトカムの改善およびCKD進行リスクの低下について、グレードAの推奨を受けたと発表した。*
ケレンディア錠は、2型糖尿病を合併するCKD患者計1万3,000人以上が参加した2つの大規模第3相臨床試験(FIGARO-DKD、FIDELIO-DKD)のデータにもとづき、日本でも2022年3月に厚生労働省より承認され、同年6月よりバイエル薬品が販売している。
また、同剤は、第3相臨床試験FIDELIO-DKDの結果にもとづき、2022年2月に欧州連合で販売承認され、2021年7月にはFDA(米国食品医薬品局)から承認され、さらに他の複数の国で審査当局の薬事承認がえられたほか、販売認可の承認申請中だという。
2試験では、2型糖尿病を合併する幅広い重症度のCKD(CKDステージ1~4)患者を対象に、心血管系および腎臓の両アウトカムに対するケレンディア錠の有効性と安全性が検討された。2試験のデータは、医学誌「New England Journal of Medicine」に2021年8月および2020年10月にそれぞれ掲載された。
2型糖尿病を合併するCKD患者での心血管系アウトカムの改善およびCKD進行リスクの低下でグレードAの推奨
ケレンディア錠(一般名:フィネレノン)は、ドイツ・バイエル社が創製した1日1回経口投与の非ステロイド型選択的MR拮抗薬。同剤は、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。2型糖尿病でMRの過剰活性化は、血糖コントロール不良などの代謝、血圧などの血行動態、炎症や線維化によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与すると考えられている。2型糖尿病を合併するCKDの適応は、米国、欧州連合、中国などでも承認されている。
ADAは「糖尿病の標準治療」の公開後、糖尿病患者の診療に関連するもっとも重要な情報と最新のエビデンスを提供するための改訂を行っている。「糖尿病の標準治療2022」(2021年12月公表)について、新たな改訂内容を示した補遺「心血管疾患とリスク管理」(2022年5月公表)には、ケレンディア錠のFIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験、および事前規定された2試験の統合解析FIDELITYから得られたエビデンスが盛り込まれた。「糖尿病の標準治療2022」では当初、2試験のうちFIDELIO-DKD試験にもとづき、「CKDとリスク管理」でケレンディア錠がグレードAで推奨されていた。
今回の改訂では、セクション10「心血管疾患とリスク管理」に、ケレンディア錠が新たにグレードAの推奨として盛り込まれた。
具体的には、「最大忍容量のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)による治療を受けている2型糖尿病を合併するCKD患者で、心血管系アウトカムの改善およびCKD進行リスクの低下のためにフィネレノンの追加投与を考慮すべき A」が追記された。
また、サブセクション「ライフスタイルと薬理学的介入」にも、「2型糖尿病を合併するCKD患者は、心血管系アウトカムの改善およびCKD進行リスクの低下のためにフィネレノンによる治療を考慮すべき」と記載された。
セクション11「CKDとリスク管理」にすでに記載されていた「心血管イベントの発現またはCKDの進行リスクが高い、またはSGLT2阻害薬が使用できないCKD患者で、CKDの進行と心血管系イベントを抑制するために非ステロイド型MR拮抗薬(フィネレノン)を推奨(表9.2) A」については、FIDELIO-DKD試験に加え、FIGARO-DKD試験および統合解析FIDELITYから得られたエビデンスが新たに反映された。
ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書、適正使用ガイド、患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
Addendum. 10. Cardiovascular Disease and Risk Management: Standards of Medical Care in Diabetes–2022. Diabetes Care 2022;45(Suppl. 1):S144–S174 (Diabetes Care 2022年5月30日)
Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2021年12月9日)
Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2020年12月3日)
11. Chronic Kidney Disease and Risk Management: Standards of Medical Care in Diabetes—2022 (Diabetes Care 2021年12月16日)
Addendum. 11. Chronic Kidney Disease and Risk Management: Standards of Medical Care in Diabetes–2022: Diabetes Care 2022;45(Suppl. 1):S175–S184 (Diabetes Care 2022年5月30日)
Introduction (Diabetes Care 2016年12月12日)