女性のCKDの多くが未診断で管理も不徹底 糖尿病などハイリスクでも放置 スウェーデン調査

2022.09.05
CKD女性の多くが未診断で管理も徹底されていない

 女性は男性に比較して、慢性腎臓病(CKD)の疑いがあるのに精査されていなかったり、糖尿病などを有するハイリスク病態であっても疾患管理が十分行われていない患者が多いことを示すデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のOskar Swartling氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Society of Nephrology(JASN)」に7月29日掲載された。

 CKDの有病率や腎機能低下の進行速度、長期予後には性差が存在することが報告されている。Swartling氏らは、そのような性差の一部は、CKDの診断や疾患管理などのヘルスケア状況が男性と女性で異なることによって説明できる可能性があると考え、以下の検討を行った。

 研究には、同国ストックホルム周辺で2009~2017年にかけて、CKD治療の向上を意図して血清クレアチニンの積極的な測定を推進するために行われたプロジェクト(stockholm creatinine measurements;SCREAM)の参加者データを用いた。ガイドラインではCKDを疑い精査すべき対象とされる、eGFR60mL/分/1.73m²未満という測定結果が、少なくとも1回以上記録されている18歳以上の成人22万7,847万人を抽出。そのうち女性は12万6,289人(55%)だった。

 eGFR60mL/分/1.73m²未満の測定結果が記録されてから18カ月間の医療記録を用いて、精査が行われていたか否か、および疾患管理状況などを性別に比較した。年齢、蛋白尿、eGFR、過去の紹介受診、教育歴、高血圧・糖尿病・心筋梗塞・心不全・末梢動脈疾患・脳血管疾患・認知症・慢性閉塞性肺疾患・がんの既往などで調整後の解析で、以下に記すように、女性は男性に比べて精査が行われた割合が低く、CKDの管理も不十分である可能性が浮かび上がった。

 まず、CKDの疑いが認められた18カ月以内に診察を受けた女性の割合は、男性の2分の1にも満たなかった〔調整オッズ比(aHR)0.48(95%信頼区間0.46~0.50)〕。また、血清クレアチニンの再検査は19%〔aHR0.81(同0.80~0.82)〕、尿中アルブミン測定は11%〔aHR0.89(0.88~0.91)〕、腎臓専門医への紹介は42%〔aHR0.58(0.55~0.61)〕、それぞれ男性より有意に少なかった。CKD患者の血圧管理に使用が推奨されているRAS阻害薬が処方されている割合も、女性は男性より32%少なく〔aHR0.68(0.66~0.69)〕、スタチンの処方率にも有意な性差が認められた〔aHR0.78(0.76~0.79)〕。

 続いて、腎機能保護や心血管疾患イベントリスク抑制のために、CKDに対する積極的な治療が必要とされる、糖尿病や高血圧、心血管疾患を有する対象者のみで解析。その結果も同様であり、女性患者は男性患者に比べて、血清クレアチニンの再検査、尿中アルブミン測定、腎臓専門医への紹介、RAS阻害薬やスタチンの処方率が有意に低かった。

 著者らは、「男性と女性に対して公平なヘルスケア介入を行い、継続していく努力が重要だ。そのような努力が、CKDによる疾病負担の軽減につながる可能性がある」と述べている。

 なお、数名の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。

[HealthDay News 2022年8月9日]

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