【新型コロナ】COVID-19が糖尿病を引き起こすメカニズムを解明 インスリン/IGFシグナリング経路を障害

2022.07.12
 大阪大学は、新型コロナウイルス感染により、細胞内転写因子であるIRF1の発現が誘導され、組織修復や代謝制御に重要であるインスリン/IGFシグナリング経路の障害が誘導されることが原因となり、組織ダメージや代謝異常をきたす可能性を示した。

 IRF1の発現は、新型コロナの危険因子として知られている高齢や男性、肥満、糖尿病の環境で高発現していることを明らかにした。

新型コロナ感染が組織ダメージや代謝異常をきたすメカニズムを解明

 大阪大学は、新型コロナ感染が組織ダメージや代謝異常をきたす理由として、新型コロナウイルス感染によりIRF1(インターフェロン調節因子1)の発現が誘導され、組織修復や代謝制御に重要であるインスリン/IGFシグナリングが障害されるためである可能性を見出した。

 IRF1は、ヒトではウイルスの感染や炎症性サイトカインによって発現が調節され、さまざまな標的遺伝子の転写活性化因子または抑制因子として機能することが知られている。

 研究グループは今回、IRF1の発現が新型コロナの危険因子として知られている高齢や男性、肥満、糖尿病の環境で高発現していることを明らかにした。

 また、重症化した患者で、IRF1の発現の上昇とともに、インスリン/IGFシグナリング経路にかかわる遺伝子の発現が低下していることも分かった。

 デキサメタゾンやジヒドロテストステロンのホルモン療法が、IRF1発現抑制およびインスリン/IGFシグナリング経路の改善に効果的であったことから、研究グループはこれらを用いたホルモン療法の効果・可能性を提唱している。

SARS-CoV-2感染による組織損傷や代謝異常の病態形成メカニズム
出典:大阪大学、2022年

デキサメタゾンやジヒドロテストステロンのホルモン療法が効果的

 新型コロナの感染は、肺を含むさまざまな組織・細胞の損傷とともに、全身の代謝異常を来すことが知られているが、そのメカニズムは不明だった。

 そこで研究グループは、ヒトの組織サンプルおよび動物・細胞モデルのトランスクリプトーム解析から、肺や肝臓、脂肪組織、膵臓細胞への新型コロナウイルスの感染が、組織修復や代謝制御に重要であるインスリン/IGFシグナリング経路の異常をきたすことを発見した。

 そのメカニズムとして、細胞内転写因子IRF1が、新型コロナウイルス感染時にインターフェロンや炎症性サイトカインと関連して誘導され、インスリン/IGFシグナリング経路に関わる因子の発現およびシグナルを抑制し、組織損傷や代謝異常を誘発することを明らかにした。

 さらに、IRF1の発現は高齢や男性、肥満、糖尿病のヒトで高く、新型コロナウイルス感染時の病態形成に相乗的に作用する可能性が示された。IRF1の発現制御機構の結果から、デキサメタゾンやジヒドロテストステロンのホルモン療法がIRF1発現抑制およびインスリン/IGFシグナリング経路の改善に効果的であることも分かった。

 研究は、大阪大学大学院医学系研究科のシンジフン助教(糖尿病病態医療学)、下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Metabolism」にオンライン掲載された。

大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
SARS-CoV-2 infection impairs the insulin/IGF signaling pathway in the lung, liver, adipose tissue, and pancreatic cells via IRF1 (Metabolism 2022年6月7日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料