高血圧と動脈硬化が糖尿病リスクの高さと関連 上腕-足首脈波伝播速度で評価
糖尿病患者が高血圧や動脈硬化を伴いやすいことは明らかになっている。しかし、高血圧や動脈硬化のある患者の糖尿病リスクという視点での研究はあまり行われていない。Tian氏らは、中国河北省の唐山(Kailuan)市で実施されている住民対象前向きコホート研究である「Kailuan研究」の参加者1万1,156人のデータを用いてこの点を検討した。
研究参加者の動脈硬化の進展レベルを、上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)で評価。baPWVと血圧に基づき、全体を以下の4群に分け、糖尿病の新規発症リスクを比較検討した。baPWVが基準値内(1,400cm/秒未満)かつ血圧も基準値内(140/90mmHg未満)の群(39.4%)、baPWVが高値で血圧は基準値内の群(24.2%)、baPWVは基準値内で血圧が高値の群(7.5%)、baPWVと血圧がともに高値の群(28.9%)。なお、ベースライン時に糖尿病の既往のある者は除外した。
追跡期間中央値6.16年で、768人が糖尿病を発症した。糖尿病発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、eGFR、喫煙・飲酒習慣、血清脂質値、尿酸値、CRP、心拍数)を調整後、baPWVと血圧がともに基準値内の群に比較して他の3群は以下に記すように、いずれも糖尿病発症ハザード比(HR)が有意に高かった。baPWVは基準値内で血圧が高値の群はHR1.48(95%信頼区間1.08~2.02)、baPWVが高値で血圧は基準値内の群はHR2.11(同1.68~2.66)、baPWVと血圧がともに高値の群はHR2.42(同1.93~3.03)。
糖尿病発症予測能は、従来のリスク因子に基づく推測モデルではC統計量0.690だった。これに対し、高血圧を追加した場合は同0.695であり、予測能に有意な変化がなかったが(P=0.0807)、従来モデルにbaPWVを追加した場合は同0.707で、予測能が有意に上昇した(P=0.0003)。従来モデルに高血圧とbaPWVの双方を追加した場合は、同0.709となった(P=0.0001)。予測能の向上を定量化した指標であるIDI(integrated discrimination improvement)は、同順に0.28、0.65、0.76と計算された。
これらの結果をもとに著者らは、「baPWVで評価した動脈硬化の進展レベルは、糖尿病の発症に対して高血圧よりも優れた予測能を有していることが明らかになった。また、高血圧と動脈硬化の予防戦略が、糖尿病の発症予防に寄与する可能性が示された」と結論付けている。
[HealthDay News 2021年5月16日]
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