【新型コロナ】インフルエンザとの同時流行に備えて 「外来診療フローチャート」を公表 厚労省と感染症学会
新型コロナと季節性インフルの同時流行に備えて
厚労省「外来受診の流れ」 感染症学会「外来診療フローチャート」
2022年~2023年の冬は、今夏を上回る新型コロナの感染拡大が生じる可能性があり、加えて季節性インフルエンザ(インフル)も流行し、より多数の発熱患者が同時に生じるおそれもある。
そうした事態に備えて、同時流行により多数の患者が生じる可能性を想定し、重症化リスク・疾患などに応じた受療行動フローを構築する必要がある。そこで厚生労働省は、関係団体・学会、行政機関などと連携しながら取り組むために、「新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース」を立ち上げた。
新型コロナと季節性インフルの同時流行に備えた対応の基本的考え方として、高齢者・重症化リスクのある人に適切な医療を提供することを優先し、通常医療を確保し、新型コロナへの対応と社会経済活動の両立をより強固なものにすることを挙げている。
具体的には、同時流行下に多数の発熱患者などが生じる場合を想定して、重症化リスク・疾患などに応じた「外来受診・療養の流れのイメージ」を示し、地域の実情に応じて、▼発熱外来や電話診療・オンライン診療の体制強化と治療薬の円滑な供給、▼健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保、▼入院治療が必要な患者への対応の強化、▼国民各位への情報提供と重症化リスクなどに応じた外来受診・療養への協力の呼びかけなど対策を進める。
これを受けて、日本感染症学会は「COVID-19、インフルエンザ同時流行となった場合の外来診療フローチャート」を示した。インフルエンザについては、2021~2022年に、北半球の多くの国でインフルエンザの小ないし中規模の流行が報告されている。
同学会は、「過去2年間、国内での流行がなかったために、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられます」として、「いったん感染が起こると、とくに小児を中心に大きな流行となるおそれがあります」と注意を呼びかけている。
厚生労働省 新型コロナとインフルエンザが同時流行となった場合の外来診療フローチャート
日本感染症学会
日本でもA(H3N2)香港型の流行が主体となる可能性
2021~2022年には、欧米では主としてA(H3N2)香港型による流行がみられた。中国でも今年になってA(H3N2)香港型が増加している。また、オーストラリアで本年度に検出されたウイルスのうち、サブタイプが判明したものでは、約80%はA(H3N2)、約20%がA(H1N1)だった。そのため、今シーズンは、日本でもA(H3N2)香港型の流行が主体となる可能性があるとしている。
日本感染症学会は「日本でも、新型コロナの発症者は再増加が続いており、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制して医療現場の負担を軽減することが重要」として、「今季も例年通りに、小児、妊婦も含めて、接種できない特別な理由のある方を除き、できるだけ多くの方に、インフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨します」と強調している。
発熱患者では、ワクチン接種歴に関わらず、新型コロナとインフルの鑑別が重要となる。両者の合併も考えられるので、外来診療では両方のウイルスを念頭にいれて、PCR、抗原検査、迅速診断などによる確定診断が必要となる。
検査の進め方については、同学会からの提言「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」や、厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」参照するよう注意を促している。
インフルと診断されたときは、抗ウイルス薬による治療を検討することになるが、重症化リスクのある患者は当然治療の対象となるが、リスクをもたない人でも重症化することがあり、その予測は困難だ。
治療の実際については、同学会が昨年に発表した提言「今冬のインフルエンザに備えて 治療編~前回の提言以降の新しいエビデンス」を参照するよう促している。なお、抗ウイルス薬の耐性の状況については、過去2年間に流行がなかったために、今後の動向を見守る必要があるとしている。
新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース (厚生労働省)
日本感染症学会「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」
日本感染症学会「今冬のインフルエンザに備えて 治療編~前回の提言以降の新しいエビデンス」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」
一般社団法人 日本感染症学会 インフルエンザ情報
新型インフルエンザ治療ガイドライン・手引きなど (厚生労働省)