2型糖尿病の早期の血糖管理は合併症を減少し寿命を延ばす UKPDSのレガシー効果は40年間持続 日本糖尿病学会で発表
UKPDS参加者を最長42年間追跡 2型糖尿病の早期の血糖管理により合併症の生涯リスクは最小限に抑えられる
英国のオックスフォード大学とエディンバラ大学が主導した、UKPDS参加者を最長42年間追跡した研究より、新規に2型糖尿病と診断された患者は早期に良好な血糖管理を行うことで、心臓発作、腎不全、視力喪失などの糖尿病合併症の生涯リスクを最小限に抑えられることが示された。
UKPDS(UK Prospective Diabetes Study)は、2型糖尿病に対する厳格な血糖管理による合併症抑制効果を検討した史上最長の大規模臨床試験のひとつで、2型糖尿病患者の集中的な血糖管理を推奨することが、世界中の診療ガイドラインに加えられたきっかけになった。
UKPDS 91では、1977~1991年に5,102人の患者が登録され、うち4,209人(82.5%)の患者は当初、集中的な血糖管理(SU薬あるいはインスリン、過体重の場合はメトホルミンを投与)、あるいは従来の血糖管理(食事療法が中心)に無作為に割り当てられた。20年間の介入試験の終わりに、3,277人の患者が10年間の試験後のモニタリング期間に入り、2007年9月30日まで続けられた。
研究グループは、定期的に収集されている国民保健サービス(NHS)の診療データに関連付け、さらに14年間にわたる長期追跡調査を実施。2007年10月1日~2021年9月30日に、1,489人(97.6%)が登録された。臨床転帰を、死亡、入院、外来受診、事故および救急外来の受診の記録とし、事前に指定した7つの臨床転帰の集合体(糖尿病関連エンドポイント、糖尿病に関連する死亡、全原因による死亡、心筋梗塞、脳卒中、末梢血管疾患、細小血管症)を検討した。
ベースラインの平均年齢は50.2歳で、41.3%が女性だった。2021年9月30日時点で生存している患者の平均年齢は79.9歳。ベースラインからの個々の追跡期間は0~42年で、中央値は17.5年(IQR 12.3~26.8)だった。全体的な追跡期間は、6万6,972人年から8万724人年に21%増加した。
その結果、試験終了後の最長24年間で、血糖値とメトホルミンによる治療のレガシー効果が後退する兆候は示されなかった。SU薬あるいはインスリンによる早期の血糖管理の強化により、従来の血糖管理群と比較して、全死因死亡の相対リスクは10%減少し[95%CI 2~17、p=0.015]、心筋梗塞の相対リスクは17%減少し[同 6~26、p=0.002]、細小血管症の相対リスクは26%減少した[同 14~36、p<0.0001]。対応する絶対リスクの減少は、それぞれ2.7%、3.3%、3.5%だった。
メトホルミン治療による早期の血糖管理の強化により、従来の血糖管理群と比較して、全死因死亡の相対リスクは20%減少し[95%CI 5~32、p=0.010]、心筋梗塞の相対リスクは31%減少した[12~46、p=0.003]。対応する絶対リスクの減少は、それぞれ4.9%と6.2%だった。
なお試験中または試験後に、両方の強化血糖管理群で脳卒中あるいは末梢血管疾患の有意なリスク減少はみられず、メトホルミン治療では細小血管症の有意なリスク減少はみられなかった。
「UKPDS参加者を最長42年間追跡した研究により、SU薬、インスリン、メトホルミンによる早期の集中的な血糖管理は、従来の血糖管理と比較して、ほぼ生涯にわたり死亡および心筋梗塞のリスクを軽減することが示された。2型糖尿病の診断後、すぐに正常血糖に近い状態に管理することは、糖尿病に関連する合併症の生涯リスクを可能な限り最小限に抑えるために不可欠である可能性がある」と、オックスフォード大学糖尿病治験ユニットの創設者であり、UKPDSの主任研究員でもあるRury Holman教授は述べている。
「今回の研究で、糖尿病の診断直後に集中的な血糖管理を実施することで、レガシー効果は試験終了後も最長24年間持続したことが示された。集中的な血糖管理に割り当てられた患者は余命が延びた。糖尿病合併症の発生率を減少できれば、患者のQOLに生涯にわたり全体的なプラスの影響があらわれる」と、同大学医療経済研究センター所長のPhilip Clarke教授は述べている。
「ただし、多くの患者は2型糖尿病の診断を受けるまでの数年間、適切な治療を受けずに放置されている可能性があることに留意する必要がある」としている。
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