高齢者糖尿病での週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendationを公開 日本糖尿病学会と日本老年医学会
日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は、高齢者での週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendationをまとめ公開を開始した。
Recommendationでは週1回持効型溶解インスリン製剤について、高齢者での使用に際してはカテゴリー分類を行ったうえで「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」にもとづき目標値を設定すること、さらに高齢者は低血糖の症状が乏しく重症低血糖をきたしやすいことから、「高齢者糖尿病治療ガイド」「インスリン イコデク投与ガイド」などを参考にして、留意することが必要と示している。

日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は、高齢者での週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendationをまとめ公開を開始した。
週1回持効型インスリン製剤(アウィクリ注、一般名:インスリンイコデク)は、注射回数を減少させ患者負担を減らしつつ、持続的なインスリン作用をもたらすことから、幅広い症例での活用が期待されている。なかでも、ADLや認知機能の低下により自己注射が困難な高齢患者でも、家族や医療者による週1回投与により、血糖管理が可能になると期待されている。
一方、週1回投与という特徴のために、投与調節の柔軟性には制限があり、一部の患者では低血糖が重篤化する可能性もあるとしている。
Recommendationでは週1回持効型溶解インスリン製剤について、高齢者での使用に際してはカテゴリー分類を行ったうえで「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」にもとづき目標値を設定すること、さらに高齢者は低血糖の症状が乏しく重症低血糖をきたしやすいことから、「高齢者糖尿病治療ガイド」「インスリン イコデク投与ガイド」などを参考にして、下記につき留意することが必要と示している。
1. 適切な治療目標を設定する |
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ADLや認知機能が低下した高齢者では、高血糖緊急症や低血糖を避けることが優先的な目標となる。低血糖になった場合、遷延することが予想されるため、HbA1c値の治療目標は厳格すぎないよう柔軟に設定する。
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2. 適切なタイミングで血糖モニタリングを実施する |
安全性の確保のため何らかの血糖測定が必要である。家族や介護者への教育を徹底し、低血糖時の対応や投与スケジュールの管理を習得してもらう。投与量が安定するまでの期間や、シックデイなど血糖の変動が予想される場合には持続血糖測定(CGM)や遠隔血糖モニタリングも検討する。投与後2~4日目の食前血糖値がもっとも下がりやすいことから、この日の血糖測定は用量調整の参考になる。
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3. 訪問看護や介護環境では慎重に計画する |
週1回〜数回の訪問看護などに依存する患者では、血糖変動を把握する機会が限られるため、慎重な投与計画が必要である。訪問看護師や介護者との連携を強化し、緊急時の対応手段を準備する。
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4. 感染症、術前の血糖管理など |
適宜(超)速効型インスリンを併用する。連日投与のBasalインスリンに変更する場合、最後にイコデクを打ってから1週間から2週間の間で、朝食前血糖が180mg/dLを超えた時点でイコデクの1/7量を開始する。
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5. 低血糖予防の注意事項と対応 |
低血糖時の対応方法に習熟してもらう(必要に応じグルカゴン投与も含む)。予定外の運動をした後は低血糖に注意する。低血糖症状が1度おさまっても再発や遷延の可能性がある。食事量や質にむらがある高齢者では慎重に適応を検討する。持効型インスリンからの切り替え投与時のみ1.5倍に増量することが推奨されているが、この場合は2回目以降も増量を続けないよう注意する。高齢者では1.5倍の初回投与を必ずしも行わない、という選択肢も考慮される。
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