電解水素水がインスリン抵抗性を改善 電解水素水の抗酸化ストレス作用に効果? 2型糖尿病患者の病態改善に期待
副作用は観察されず、電解水素水は日常利用できるので、食事療法にとりいれやすいとしている。
電解水素水のもつ抗酸化ストレス作用によりインスリン抵抗性を改善
東北大学の研究グループは、2型糖尿病患者が電解水素水を日常的に飲用することで、インスリン抵抗性高値を改善する効果を得られることを、多施設共同前向き無作為割付二重盲検試験で確認したと発表した。研究成果は、「Diabetology International」の電子版に掲載された。
研究は、東北大学高度教養教育・学生支援機構学生支援開発部門臨床医学開発室の小川晋准教授(研究当時:東北大学大学院医学系研究科)らの研究グループが、日本トリムとの共同研究費による支援を受け行ったもの。
2型糖尿病では、インスリン抵抗性を改善するため、食事療法や運動療法が推奨され、必要に応じて薬物療法も行われている。しかし、インスリン抵抗性を改善することはなかなか困難だ。そのため、日常で簡単に行えるインスリン抵抗性の改善方法が望まれている。
一方、電解水素水は、家庭用管理医療機器である整水器から水の電気分解によって生成される、アルカリ性で抗酸化性をもつとされる水素分子(H2)を含む飲用水。
研究グループは、酸化ストレスの増大とインスリン抵抗性の増大が密接に関連することから、電解水素水のもつ抗酸化ストレス作用により、インスリン抵抗性を改善できるのではないかと考えた。
そこで、電解水素水の日常的飲用が、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性に対してどのような影響を及ぼすかを、電解前の浄水と比較した試験で検証した。
インスリン抵抗性の高い患者で電解水素水の飲用により改善
インスリン治療を受けていない2型糖尿病49名を、電解水素水飲用群と浄水飲用群に分け、各患者宅にどちらの水が出るかわからないように改良した電解水素水整水器を設置し、1日あたり1,500~2,000mLを飲用してもらった。
飲用開始直前と飲用3ヵ月後のインスリン抵抗性(HOMA-IR)、耐糖能、糖代謝および酸化ストレス関連因子を含む臨床データを評価・比較した。
その結果、データを取得できた糖尿病患者43名で、3ヵ月間の日常的電解水素水飲用群23名では、血液中の乳酸濃度が低下し、尿中への尿酸の排泄が増え、尿のpHが上昇していた。他の因子の変化はなく、また電解水素水飲用による副作用は全く観察されなかった。
さらに、飲用前の段階のインスリン抵抗性が高い患者群と低い患者群に分けて解析を行ったところ、高い患者群ではインスリン抵抗性の改善が認められた。
さらに、インスリン抵抗性が高い群では、酸化ストレスの指標のひとつである総酸化度(d-ROM)が、電解水素水飲用群のみで有意に低下しており、インスリン抵抗性が低い群では、総抗酸化度(BAP)が、電解水素水飲用群のみで有意に上昇していた。これらの変化は浄水飲用群では認められなかった。
このことは、酸化ストレスが増大している例で、電解水素水の飲用により酸化ストレスが低下したことを示している。
「今回の試験では、インスリン抵抗性の値が高い患者から低い患者とさまざまであり、高い患者でのみインスリン抵抗性を改善するということは、糖尿病の改善にもつながり、また糖尿病発症を抑制する可能性も期待されます。低い群で変化はありませんでした。今後さらに被験者数を増やし、飲用期間を長くして試験する必要があります」と、研究者は述べている。
東北大学高度教養教育・学生支援機構
Electrolyzed hydrogen-rich water for oxidative stress suppression and improvement of insulin resistance: A multicenter prospective double-blind randomized control trial(Diabetology International 2021年7月18日)