日本人向け「糖尿病予測モデル」を開発 10年以内の糖尿病発症リスクを高精度に判定 京都府立医科大学など
日本人の2型糖尿病の発症リスクを予測するモデルを新たに開発したと、京都府立医科大学などが発表した。
健康診断で得られた、▼年齢、▼性別、▼BMI、▼収縮期血圧(SBP)、▼中性脂肪(logTG)、▼HDLコレステロール(HDL)、▼ALT(logALT)、▼空腹時血糖(FPG)、▼体重増加、▼喫煙の有無――の10項目を予測モデルの変数として使用し、日本人での2型糖尿病の10年発症リスクを予測する。

健診データのみで2型糖尿病の10年発症リスクを予測 高い精度を確認
日本人の2型糖尿病の発症リスクを予測するモデルを新たに開発したと、京都府立医科大学などが発表した。大規模かつ長期的なデータを用いて検討し、優れた予測能を有しており、妥当性確認結果でも高い信頼性を確認したとしている。
健康診断で得られた、▼年齢、▼性別、▼BMI、▼収縮期血圧(SBP)、▼中性脂肪(logTG)、▼HDLコレステロール(HDL)、▼ALT(logALT)、▼空腹時血糖(FPG)、▼体重増加、▼喫煙の有無――の10項目を予測モデルの変数として使用し、日本人での2型糖尿病の10年発症リスクを予測する。
開発した予測モデルは、一般的な健康診断データのみで糖尿病リスクを算出でき、従来の糖尿病予測に必要とされている専門的な検査を必要としない点が大きな利点としている。これにより一般の人々が自らの糖尿病リスクを把握し、早期に予防策を講じることも可能になり、結果的に糖尿病発症の抑制や医療コストの削減に貢献することが期待される。
糖尿病は深刻な健康課題となっており、その発症予防は日本でも重要な課題になっている。日本人に適した糖尿病発症予測モデルの開発が求められているが、これまでの予測モデルは観察期間が短い、サンプルサイズが小さい、HbA1cや食後血糖値といった日本の健康診断では一般的でない指標を用いているなど、実用性に課題があり、外部妥当性確認を行いモデルの精度を評価した例もなかった。
研究は、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 フューチャーステップ研究員の宗川ちひろ氏、岡田博史助教、福井道明教授 、同大学院医学研究科 生物統計学の堀口剛助教 、手良向聡教授、京都府立医科大学附属病院 臨床研究推進センター データサイエンス部門の内藤あかり特任助教、パナソニック健康保険組合の黒木和志郎氏、伊藤正人氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes/Metabolism Research and Reviews」に掲載された。
「糖尿病予測モデル」の企業の健康管理プログラムや地域の医療機関での活用が現実的に
研究グループは、2008~2018年にパナソニックが実施した健康診断プログラムに参加した、ベースラインで糖尿病のない40歳以上の日本人従業員7万2,124人を、最大10年間追跡した職域データの、健康診断で容易に取得できるデータをもとに、新たな日本人に特化した高精度な2型糖尿病発症予測モデルを開発した。
外部検証データセットを、岐阜県岐阜市で実施されているNAGALA(Gifu City, Gifu Prefecture Longitudinal Analysis)コホートに参加した1万2,885人から取得。外部妥当性確認コホートを用いた評価も実施し、モデルの精度と信頼性を向上させた。
その結果、観察期間中(中央値9.0年)に5,133人(7.1%)が糖尿病を発症。モデルの変数選択は、糖尿病専門医と生物統計専門家の議論にもとづき、臨床的に意味があり、かつ独立した客観的な因子を選定した。
10年以内の糖尿病発症リスクの推定確率は、以下の回帰式を用いて算出した。
その結果、この予測モデルは、Optimism-corrected c-index 0.877[95%信頼区間 0.852~0.882、5年予測モデルのAUC 0.859、10年予測モデルのAUC 0.834]、外部妥当性確認コホート c-index 0.882[5年予測モデルのAUC 0.877、10年予測モデルのAUC 0.845]といった優れた性能を示し、高精度な糖尿病発症予測が可能であることが示された。
2008年に導入された特定保健指導は、将来的な心血管リスクの低減を目的としているが、その効果は限定的とも報告されている。また、2型糖尿病の発症リスク因子として、加齢、BMI、体重の変動、耐糖能異常、脂肪肝、高血圧、脂質異常、喫煙、家族歴、運動習慣、食習慣などが知られており、各国でこれらの因子を組み合わせたリスク予測ツールが開発されているが、日本人は欧米人と比べてBMIが低く、糖尿病を有する人のBMIも日本人の平均BMIと近いため、欧米の予測モデルをそのまま適応するのは難しく、日本人に特化した予測ツールの開発が求められている。
「本研究で開発した予測モデルの最大の特徴は、大規模なデータセット(パナソニックコホートデータ)と、10年間の長期フォローアップを活用しており、非常に高い予測精度を実現している点だ。さらに、外部妥当性確認(NAGALAコホート)を通じて、モデルの信頼性と汎用性を確認しており、企業の健康管理プログラムや地域の医療機関での活用が現実的となっている」と、研究者は述べている。
「本モデルは今後、とくに日本の職場での糖尿病予防戦略で重要な役割を果たすことが期待される。定期健康診断で得られる基本的なデータをもとに、糖尿病発症リスクを予測できるため、企業や団体が行う健康診断のデータを活用し、早期に高リスク者を特定し、生活習慣の改善を促すことが可能になる」。
「将来的には、自治体や地域の健康支援プログラムにも適用し、社会全体での糖尿病予防に貢献することを目指す」としている。
京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学
Development of a Prediction Model for Predicting 10-year Incidence of Type 2 Diabetes in Japanese People; Panasonic Cohort Study 7 (Diabetes/Metabolism Research and Reviews 2025年3月18日)