多量飲酒に糖尿病・高血圧・肥満が合わさると肝疾患リスクが2.4倍に上昇 4万人超を調査

2025.02.13

 多量飲酒の習慣があり、心血管代謝リスク因子[糖尿病・高血圧・ウエスト周囲径]のある人は、重度の肝疾患を発症するリスクが2.4倍に上昇することが、米国健康栄養調査(NHANES)の4万人超のデータ解析により示された。

 「これらの3つの心臓代謝リスクのない患者にとっても、多量のアルコール摂取は安全ではない。アルコールは肝臓にとって有毒であり、多量飲酒者は全員、進行した肝疾患のリスクがある」と、研究者は指摘している。

多量飲酒に心血管代謝リスク因子[糖尿病・高血圧・ウエスト周囲径]が合わさると肝疾患リスクが2.4倍に上昇

 多量飲酒の習慣があり、心血管代謝リスク因子[糖尿病・高血圧・ウエスト周囲径]のある人は、重度の肝疾患を発症するリスクが2.4倍に上昇することが、米国健康栄養調査(NHANES)の4万人超のデータ解析により示された。

 研究は、南カリフォルニア大学の消化器・肝臓病科および同大学依存症科学研究所のBrian Lee氏らによるもの。研究成果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に掲載された。

 アルコールに関連する心血管代謝リスク因子(CMRF)と、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)や代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)との関連が知られており、アルコール摂取によるCMRFの増加と肝臓関連疾患の関連の解明が求められている。

 そこで研究グループは、NHANESに参加した、アルコール摂取とCMRFステータスのデータのある成人4万898人の、2001年1月~2020年3月のデータを解析した。うち飲酒量の増加がみられたのは5.6%(2,282人)だった。

 CMRFは国立コレステロール教育プログラムの成人治療パネルIIIによって定義し、アルコール使用量の増加は、「210g/週以上(男性)」および「140g/週以上(女性)」に相当する場合とした。1日の摂取量に換算すると、多量飲酒は男性では2ドリンク(純アルコールで30g)、女性では1.5ドリンク(同 20g)となる。主要評価項目は、肝線維化のスコアであるFIB-4 index(>2.67)とした。

 その結果、糖尿病がある人や、ウエスト周囲径の大きい人が、アルコールを飲みすぎると、進行性の肝疾患を発症する可能性が2.4倍高くなり、高血圧がある人は1.8倍高くなることが示された。

 飲酒量の増加と非増加を比較した場合のFIB-4高値の比較は、CMRFの数ごとに高くなり、CMRFが0の群は2.3%[95%CI 1.0~5.0% ]、1の群は3.0%[同 01.6~5.6%]、2の群は3.3%[同 2.1~5.1%]、3の群は5.9%[同 3.5~9.6%]、4あるいは5の群は6.1%[同 3.3~9.7%]になった。

 多変量ロジスティック回帰による解析では、飲酒量の増加した人では、高FIB-4のaOR(調整オッズ比)が2倍超に上昇することが示された。CMRFが0の群と比較した場合、1の群は1.24[0.41~3.69]、2の群は1.39[0.56~3.50]となり、高FIB-4は増えなかったが、3の群で2.57[同 0.93~7.08]、4あるいは5の群で2.64[同 1.05~6.67])と上昇した。

 飲酒量が増加した人では、「糖尿病」「高血圧」「ウエスト周囲径」という心血管代謝リスク因子が3以上あることが、肝線維化のスコアであるFIB-4の高値を予測するための最適なカットオフになることがより示された。

 なお、他の2つのCMRFである高トリグリセリドと低HDLコレステロールについては、肝疾患との相関はみられなかった。

アルコールは肝臓にとって有毒 多量飲酒者は肝疾患リスクがある

 「1日に同じ量のアルコールを飲んでいても、肝疾患を発症し進行する患者がいるが、発症しない患者もいる。この違いは何によるものなのかを解明することを目指した」と、肝臓専門医であるLee氏は言う。

 糖尿病、高血圧、ウエスト周囲径という心血管代謝リスク因子は、肝臓に脂肪が蓄積する経路を共有しており、過度のアルコール摂取による肝臓への余分な脂肪沈着と相まって、重大な健康障害を引き起こす可能性があると考えられる。

 「ただし今回の研究は、これらの3つの心臓代謝リスクのない患者が、多量のアルコール摂取をしても安全であることを示すものではない。アルコールは肝臓にとって有毒であり、多量飲酒者は全員、進行した肝疾患のリスクがあることが分かっている」と、Lee氏は付け加えている。

 「今回の研究が、飲酒について判断するとき、個人の健康とリスクのプロファイルについて考慮するのを促すきっかけとなることを期待している。また、心血管代謝リスク因子のある飲酒者に対して、より個別化された介入を医師などが提供し、高リスク群の肝臓障害を早期に発見し治療を開始できるようになることを望んでいる」としている。

Why some heavy drinkers develop advanced liver disease, while others do not (南カリフォルニア大学 2025年2月6日)
Association of Alcohol and Incremental Cardiometabolic Risk Factors with Liver Disease: A National Cross-Sectional Study (Clinical Gastroenterology and Hepatology 2025年2月3日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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