1型糖尿病患者は自分に対する「スティグマ」があると血糖管理が困難に

2023.02.02
1型糖尿病患者ではセルフスティグマがHbA1cと有意に関連

 成人1型糖尿病患者では、自分に対するスティグマである「セルフスティグマ」の評価スコアとHbA1cレベルとの間に有意な関連のあることが報告された。朝日生命成人病研究所附属医院糖尿病内科の濱野頌子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に1月25日掲載された。

 スティグマは、「汚名」や「不名誉」、「負の烙印」などと訳されることが多い。誤った情報にもとづいて、そのようなスティグマが社会に広まると、その対象となった人が社会に受け入れられにくい状況が形成される。近年、糖尿病に関するスティグマが、糖尿病患者の治療や社会活動、生活の質(QOL)に影響を及ぼしていることへの関心が高まっており、関連団体などによる対策が推進されている。一方、セルフスティグマとは自分自身に対する否定的な感情のこと。慢性疾患を有する患者では、セルフスティグマが強いことを示唆する研究報告がある。ただ、1型糖尿病患者のセルフスティグマの実情や血糖管理状態との関連は、ほとんど分かっていない。

 濱野氏らの研究は、2021年8~11月の同院の外来1型糖尿病患者のうち、研究参加に同意した18歳以上の成人166人を対象に実施された。急性感染症や悪性腫瘍、重度の精神疾患の罹患者および血液透析患者は除外されている。セルフスティグマの評価には既報研究に基づき、9項目からなる日本語版のスケール(SSS-J)を用いた。SSS-Jは合計スコア0~27点の範囲でスコア化され、スコアが高いほどセルフスティグマが強いと判定される。

 解析に必要なデータが欠落している患者を除き、109人を解析対象とした。主な特徴は、年齢58.3±13.5歳、男性56.8%、糖尿病罹病期間25.5±13.8年、BMI22.9±4.0、HbA1c7.6±0.9%(過去3回の通院時の平均)であり、SSS-Jは中央値11点(四分位範囲7~14)だった。

 HbA1cを従属変数とする単変量解析の結果、年齢、BMI、糖尿病罹病期間、就労状況、およびSSS-Jとの有意な関連が認められた。次に、単変量解析で有意性が認められたこれらの因子を独立変数とする多変量解析を施行。その結果、BMI(β=0.36、P<0.001)とならび、SSS-J(β=0.23、P=0.009)は、HbA1cとの有意な正の関連が維持されていた。一方、フルタイム勤務(パートタイム勤務を基準としてβ=-0.44、P=0.001)や退職後・無職(同β=-0.35、P=0.010)は、HbA1cと負の有意な関連が見られた。なお、年齢、性別、糖尿病罹病期間などは、HbA1cとの関連が非有意だった。

 著者らは、本研究が単一施設での横断研究であり、外的妥当性の確認や因果関係の証明には多施設での前向き研究が必要なこと、1型糖尿病患者でのSSS-Jの精度検証が十分でないことなどを研究の限界点として挙げている。その上で、「成人1型糖尿病患者のセルフスティグマがHbA1cに関連しているという知見を得られた。1型糖尿病の治療におけるセルフスティグマへの対応は、HbA1cを測定することと同程度に重要な可能性がある」と述べている。

[HealthDay News 2023年1月25日]

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