糖尿病など5つの危険因子が心血管疾患の罹患の半分以上に寄与 九州大学「久山町研究」も参加した国際共同研究
5つの危険因子の心血管疾患への寄与 アジアでは男性の55.6%、女性の59.2%に影響
とくに血圧・コレステロール値・年齢により罹患リスクは上昇
九州大学は、▼過体重、▼高血圧、▼高コレステロール血症、▼喫煙習慣、▼糖尿病の5つの心血管疾患の危険因子が、世界の心血管疾患(虚血性疾患または脳卒中)の罹患の半分以上に寄与していることを明らかにした。
研究は、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授、坂田智子助教らの研究グループ(久山町研究)が参加している国際共同研究「Global Cardiovascular Risk Consortium」によるもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」に掲載された。
同研究は、ハンブルグ・エッペンドルフ医療センター(UKE)心臓血管センター循環器科とドイツ心臓血管研究センター(DZHK)が主導する国際共同研究であり、北米、中南米、西ヨーロッパ、東ヨーロッパおよびロシア、北アフリカおよび中東、サハラ以南のアフリカ、アジア、オーストラリアの8地域の34ヵ国の112のコホート研究に参加した150万人の個人レベルのデータを統合解析した。
その結果、上記の5つの危険因子をすべて合わせると、男性では心血管疾患罹患の52.6%、総死亡の19.1%、女性ではそれぞれ57.2%、22.2%に寄与していることが明らかになった。アジア地域のみでは、それぞれ男性では55.6%、43.2%、女性では59.2%、34.3%という結果になった。
さらに、血圧値、血清コレステロール値の上昇にともない、心血管疾患の罹患リスクが直線的に上昇すること、上記の危険因子の心血管病罹患への影響は年齢が若いほど高い(例:40歳代の方が80歳代よりも高血圧の心血管疾患罹患への影響が高い)ことも示された。
「以上の成績より、5つの危険因子を適切に治療・管理することにより、心血管疾患の半分以上が予防できることが示唆される」と、研究者は述べている。
一方、「これらの5つの危険因子では心血管疾患罹患の約45%、総死亡の約80%は説明できないことから、今後も新たな危険因子の検討が必要となる」としている。
九州大学 大学院医学研究院
Global Effect of Modifiable Risk Factors on Cardiovascular Disease and Mortality: The Global Cardiovascular Risk Consortium (New England Journal of Medicine 2023年8月26日)