特定保健指導+予防医療プログラム 地域の特性に合わせた指導で肥満を改善

2021.11.02
 山形県東置賜郡高畠町は、町民のメタボリックシンドローム改善に向け、山形市のNPO法人地域健康プランと共同で研究を実施。独自の予防医療プログラムを運営している。

 2013年度から共同で実践している研究で、3年後に平均の体格指数(BMI)を改善させることに成功した。

 地域の現状に合わせたきめ細やかな指導が成果を後押ししたとみられる。「全国的に統一された基準と方法だけでは、地域住民の行動の変化を促進し維持するのに十分ではない可能性があります」としている。

町の現状にあわせてきめ細やかな保健指導を行う予防医療プログラム

 高畠町は、山形県の南東にある人口約2万3,000人の町。2016年に第2次げんき高畠21を策定し、町民の健康増進に取り組んでいる。

 特定健診の受診率は、2019年には55.3%に向上した。電話による受診勧奨や、ターゲットとなる町民の特性に合わせたメッセージや効果検証を行うなど、町の保健師などが町民1人ひとりに合わせて行ったきめ細やかな指導を目指している。

 一方で、40代の特定健診の受診率は39.3%と伸び悩んでいる。メタボリックシンドロームの該当者の割合も21.9%、予備群の割合は11.0%と、目標に達していない。

 また、町の2019年の調査によると、運動習慣者の割合は男性34.6%、女性29.1%、適正体重を維持している人の割合は男性66.7%、女性74.1%と、前回の調査より改善しているものの、健診で要指導以上の判定を受けた人は、血圧値は52.8%、血糖値は74.0%と、高い割合になっている。

 そこで、町民のメタボリックシンドローム改善に向け、町はNPO法人地域健康プランと共同で、独自の予防医療プログラムを運営し、2013年度より共同で研究を開始した。

 現在、実施している特定健診、全国一律である特定保健指導の基準や方法だけでは、町民の行動変容を起こしにくく、それを維持していくことも難しいと考えた。

 そこで、調査で収集したデータを解析し、町の現状にあわせたアプローチ法を検討、将来、心疾患や脳卒中など、健康に大きな影響をあたえる可能性の高い疾患のハイリスク集団へ集中的な介入をおこなう予防医療プログラムを作成した。

集中的な介入により長期にわたるメタボ改善の効果を

 この予防医療プログラムを、生活習慣病のリスクが高いと判定された町民195人を対象に2014~2017年に実施。研究成果は、国際的学術誌「Risk Management and Healthcare Policy」に掲載された。

 対象となったのは、特定健診や医療費のデータ解析により、メタボのリスクが高いと判定された町民。保健指導に予防医療プログラムを追加し、効果を得られるかを検証する前向き介入研究を行なった。

 参加者の年齢は65歳以下、体格数(BMI)は25以上、推定糸球体濾過率(eGFR)は90ml/min/1.73m²以下だった。78人を介入群に、117人を対照群に割り当てた。

 1年後、介入群ではBMIは26.7±2.17(対照群は27.3±2.12)、eGFRは72.2±11.1ml/min/1.73m²(73.1±10.5)と有意差はつかなかったが、3年後には、BMIは26.4±2.05(対照群は27.4±2.26)と有意差がついた。

 保健師による地域の現状にあわせたきめ細やかな指導と集中的な介入により、長期にわたりメタボ改善の効果を得られることが示された。介入により長期的には医療費削減につながる可能性がある。

 「全国的に統一されたガイダンスの基準と方法だけでは、行動の変化を促進し維持するのに十分ではない可能性があります。1人ひとりにリスク要因に対応し、調整したアプローチが求められており、地域に適した予防医療プログラムが必要です」と、研究者は述べている。

山形県東置賜郡高畠町
特定非営利活動法人 地域健康プラン
Efficacy of Additional Intervention to the Specific Health Guidance in Japan: The Takahata GENKI Project(Risk Management and Healthcare Policy 2021年9月21日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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