インスリン注射で問題視される皮膚合併症「インスリンボール」 インスリン注射部位に形成される皮下腫瘤
2021.04.13
糖尿病治療患者のインスリン製剤注射部位に、インスリンのアミロイド凝集が含まれる皮下腫瘍(インスリンボール)が形成されることがある。
愛媛大学は、抗生物質の1種であるミノサイクリンによる、インスリンアミロイドの分解および毒性中間体の生成を明らかにしたと発表した。
これにより、体内にあるインスリンボールの毒性発現メカニズムについて明らかになると期待される。
愛媛大学は、抗生物質の1種であるミノサイクリンによる、インスリンアミロイドの分解および毒性中間体の生成を明らかにしたと発表した。
これにより、体内にあるインスリンボールの毒性発現メカニズムについて明らかになると期待される。

注射部位に形成されるインスリンボールが毒性を発現
研究は、愛媛大学大学院理工学研究科の座古保教授らの研究グループが、東京医科大学茨城医療センター、佐々木研究所附属杏雲堂病院、日本電子、ノルウェー科学技術大学との国際共同研究として行ったもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載された。 糖尿病治療に用いられるペプチドホルモンの1種であるインスリンは、高温・酸性条件下でアミロイド凝集を形成することが知られている。 糖尿病治療患者のインスリン製剤注射部位に、インスリンのアミロイド凝集が含まれる皮下腫瘍(インスリンボール)が形成される場合があり、治療過程での皮膚合併症として問題視されている。 アミロイド凝集はアルツハイマー病など、さまざまな病気の原因になると考えられている。インスリンボールの悪影響として、周辺組織への細胞毒性による壊死の症例が報告されている。 興味深いことに、毒性インスリンボールをもった患者は、ミノサイクリン抗生物質の投与歴があり、これまでに研究グループはインスリンボールの毒性発現とミノサイクリンとの関係の可能性を見出してきた。しかしら、インスリンアミロイド凝集に対するミノサイクリンの直接的な影響は不明だった。 今回の研究では、ミノサイクリンと反応させたヒトインスリンおよびインスリン製剤のアミロイド凝集に関して、構造・細胞毒性の評価を行った。その結果、ミノサイクリンによってインスリンアミロイド凝集は分解され、一時的に高毒性分解物が生じることが示唆された。 「今回の研究により、体内に存在するインスリンボールの毒性発現メカニズムについても明らかになると期待できる」と、研究グループは述べている。