メトホルミンを使用している糖尿病患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連死のリスクが低い
メトホルミンが処方されている糖尿病患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連死のリスクが低いとするデータが報告された。米アラバマ大学バーミンガム病院のAndrew B. Crouse氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に1月13日掲載された。
Crouse氏らの研究は、2020年2月25日~6月22日に同院で新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の検査が行われた、連続2万5,326例の電子カルテ情報を遡及的に解析したもの。SARS-CoV2陽性率および死亡率と背景因子との関連を検討した。
対象者のうちSARS-CoV2陽性者は604人(2.4%)だった。糖尿病患者の割合は、非陽性者では23.7%、陽性者では39.6%だった。感染リスクは、黒人/アフリカ系アメリカ人〔オッズ比(OR)2.61、95%信頼区間2.19~3.10〕、肥満(OR1.93、同1.64~2.28)、高血圧(OR2.46、同2.07~2.93)、糖尿病(OR2.11、同1.78~2.48)で、有意な上昇が認められた。
COVID-19罹患に関連する死亡は67人(SARS-CoV2陽性者の11.1%)だった。高血圧と糖尿病は、COVID-19関連死のリスクと有意に関連していた。具体的には、高血圧患者のCOVID-19関連死はOR3.60(同1.68~7.69)、糖尿病患者ではOR3.26(同2.11~6.2)だった。年齢、人種、性別、肥満、高血圧、糖尿病を共変量とする調整後、高血圧は有意性が消失したが、糖尿病は引き続き有意であり(OR2.40、同1.29~4.48)、COVID-19関連死の独立したリスク因子として抽出された。
糖尿病でSARS-CoV2陽性だった239人のうち、COVID-19に関連して45人(18.8%)が死亡していた。COVID-19診断前の処方薬情報を確認できた症例を対象として、メトホルミンが処方されていたか否かで死亡リスクを比較すると、同薬が処方されていた群の死亡率は19.1%であるのに対して、処方されていなかった群では81.0%だった。前記の共変量にインスリンの使用を加えた回帰分析の結果、COVID-19診断以前からのメトホルミン処方は、COVID-19関連死のリスクが低いことと有意に関連していた(OR0.33、同0.13~0.84)。
著者らは「これらの結果は、糖尿病がCOVID-19関連死の独立したリスク因子である一方で、メトホルミンを使用している患者では、このリスクが大きく低下することを示唆している。COVID-19のハイリスク者である糖尿病患者に、メトホルミンが保護的に作用する可能性がある」と述べている。
[HealthDay News 2021年1月27日]
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