妊娠糖尿病は児の心血管リスクを高める
2020.11.19
母体の糖代謝異常が児の成長後の心血管疾患リスクを高めることが報告された。また、妊娠糖尿病と2型糖尿病で比較した場合、心血管イベント発生率に関しては前者の方がリスクをより上昇させる可能性が示された。マニトバ小児病院 研究所(カナダ)のLaetitia Guillemette氏らの研究結果であり、詳細は「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」9月28日オンライン版に掲載された。
Guillemette氏らは、カナダのマニトバ州における人口調査レジストリのデータを用いたコホート研究を実施。1979~2005年の間に生まれた子ども29万3,546人を、2015年3月まで追跡した。この対象のうち8,210人(2.8%)の母親は妊娠中に妊娠糖尿病を発症し、3,217人(1.1%)の母親は妊娠前発症の2型糖尿病合併妊娠だった。
主要評価項目は、心停止、心筋梗塞、虚血性心疾患、脳梗塞の発生で構成される心血管イベントの複合エンドポイント。二次評価項目は、35歳まで追跡された児の心血管疾患の危険因子(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病など)の発症とした。
362万8,576人年の追跡で、2,765人(0.9%)に心血管イベントが発生した。なお、最終追跡時点における平均年齢は20.5±6.4歳で、49.3%が女性。
傾向スコアによるマッチング後、妊娠中の糖代謝が正常だった母体からの出生児に比較して、妊娠糖尿病母体からの出生児は、心血管イベントリスクの有意な上昇が認められた〔調整ハザード比(aHR)1.42(95%信頼区間 1.12~1.79)〕。それに対して、2型糖尿病母体からの出生児の心血管イベントリスクは、aHR1.40(同0.98~2.01)であり、統計的に有意でなかった。
一方、心血管疾患の危険因子を発症したのは1万2,673人(4.3%)だった。傾向スコアマッチング後、妊娠糖尿病母体からの出生児の心血管疾患危険因子発症リスクはaHR1.92(同1.75~2.11)だった。また、2型糖尿病母体からの出生児もaHR 3.40(同3.00~3.85)であり、心血管疾患危険因子の発症に関しては、両者で有意なリスク上昇が観察された。
結果として、子宮内での糖代謝異常への曝露は、児の35歳までの心血管疾患のリスク上昇と関連していた。著者らは、「子宮内で高血糖に曝露された子どもの成長過程で、心血管疾患危険因子のスクリーニングをより積極的に行う必要がある。それが、この集団における心血管疾患リスクを効果的に低下させる有用な戦略となり得る」と述べている。
[HealthDay News 2020年9月28日]
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