服薬アドヒアランス不良の患者は1日の服薬回数が多い 2型糖尿病患者の経口薬の処方実態調査
2020.10.01
日本イーライリリーは、経口糖尿病治療薬を服用する2型糖尿病患者5,504名を対象とした薬剤の服薬回数と服薬アドヒアランスおよび負担感に関する調査を実施した。詳細は「Progress in Medicine」に掲載された。
2型糖尿病患者は平均2.1剤の経口糖尿病薬を服用
2020年度診療報酬改定により、ポリファーマシー(多剤服薬に関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態)の解消に向けた対応がますます進められている。 糖尿病治療においても、治療の複雑化の問題に加え、多剤併用や服薬アドヒアランスの低下による残薬の問題が報告されており、治療上の問題のみならず医療経済損失にもつながっている。 このような背景に加え、これまでの糖尿病治療の実態調査では薬剤の服薬タイミングを食前、食後に分けて収集している報告がないことから、今回の調査ではより詳細な薬剤の服薬回数およびタイミングについて、服薬アドヒアランスや治療の負担感、1日のライフサイクルとともに調査した。 その結果、調査期間に回答を得た2型糖尿病患者675名は、経口剤の糖尿病薬を平均2.1剤、糖尿病薬以外の薬剤を平均6.8剤使用していました。服薬回数と服薬タイミングを調査したところ、糖尿病薬の1日あたりの服薬回数は平均2.0回で、全体の60.7%の患者は1日2回以上服薬していた。 また、その服薬タイミングはもっとも多い朝食後が74.4%、夕食後が44.9%だったが、約3割の患者が食前に服薬していた(朝食前29.0%、昼食前15.7%、夕食前22.7%)。 この10年間で、1日複数回服用する負担は徐々に軽減されつつあるが、いまだ多くの患者が1日に複数回服用が必要な薬剤を使用していることが明らかになった。 また、今回の調査結果から、患者の32.4%は服薬アドヒアランスが不良であり、1日あたりの服薬回数が平均2.3回で、服薬アドヒアランス良好な患者の平均1.9回に比べ、1日あたりの服薬回数が有意に多いことが分かった。服薬アドヒアランスが不良な患者は最近測ったHbA1cの値が高い傾向がみられた。服薬アドヒアランス不良の患者の38.4%が服薬に負担を感じている
服薬アドヒアランスと服薬の負担感に関する結果では、全体の患者の22.5%が薬剤を服薬することに負担を感じていたことが分かった。 また、服薬アドヒアランスが良好な患者の中で、薬剤を服薬することに負担を感じている人が14.9%にとどまるのに対し、服薬アドヒアランスが不良の患者では38.4%が負担に感じていると回答し、有意な差が認められた。 なお、アンケートに回答した患者のライフサイクルの観点では、雇用状況による起床時間や自宅を出発する時間、帰宅時間、食事の開始時間に大きな違いはみられなかった。 「今回の調査では、患者の服薬アドヒアランスに関して薬の服薬回数や負担度合いが影響していることが示されました。薬剤師が患者に処方されている全薬剤や患者の状況を把握し、状況に応じて患者の負担感を軽減するために医師に処方変更などを提案することも有効な手段だと思います。治療の負担が少ない生活を送ることができる患者が増えるよう、積極的に本課題の解決に取り組んでいくことが重要だと思います」と、論文の筆頭著者である帝京平成大学薬学部の亀井美和子教授は述べている。 日本イーライリリー 2型糖尿病患者における薬剤の服薬回数と服薬アドヒアランスおよび負担感-電子お薬手帳サービスを利用したインターネット・アンケート調査-Progress in Medicine 2020; Vol.40 No.9: 979-987
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]