COVID-19の迅速診断法「SATIC法」の開発に向け産官学が連携 唾液から25分で判定でき、機器も不要

2020.06.24
 塩野義製薬は、日本大学、群馬大学、東京医科大学との間で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むウイルスの新規迅速診断法に関するライセンス契約に合意したと発表した。産官学の連携により、SATIC法による迅速診断法の早期実用化に取り組むとしている。

25分の反応で検出機器を必要とせず、目視で判定可能

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、発症者のみならず、未発症者や潜伏期間にある感染者からの感染拡大が大きな問題となっている。

 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を診断する検査法としては、鼻腔や咽頭、唾液から採取した検体からウイルスの核酸を検出するPCR法や抗原検査キットなどが用いられているが、これらの検査法では、専用測定器が必要で、測定の簡便性、迅速性、検体採取時の医療従事者の感染リスクなど、多くの課題がある。そのため、こうした課題を解決した高感度かつ安価な診断法が求められている。

 そこで、日本大学、群馬大学、東京医科大学の共同研究チームは、核酸増幅法(SATIC法)によるウイルス迅速診断法の開発に成功した。SATIC法は、特定の遺伝子のみならず、変異遺伝子、さらにはタンパク質や代謝物などの生体内分子も、簡便な手法で特異的かつ高感度に測定できる技術だ。

 SATIC法では、特定のRNAと結びつくことが知られ注目されているチオフラビンTなどを用いた試薬で自動で検出をはじめ増幅させる。次に、ナノレベルの大きさの磁性体(ナノ磁性ビーズ)の特性を生かし、増幅させたターゲットの遺伝子を磁気の力で凝集させる。

SATIC法の定までのフロー(手順)

 SATIC法による迅速診断法には以下の特徴がある。
・ SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの感染の有無を、検出機器を必要とせず目視で容易に判定可能。
・ 検体採取から25分程度で判定可能。
・ 偽陽性反応等の非特異反応がなく、PCR法と同等の高い感度。
・ 鼻咽頭ぬぐいの綿棒のみでなく、唾液や喀痰からの検出が可能であるため、患者の侵襲性が低く、検体採取に伴う医療従事者の感染の危険性が限りなく低減され、さらに唾液の場合、患者本人による検体採取も可能。

 SATIC法であれば、COVID-19やインフルエンザウイルス感染症などの検査時点での感染の有無を短時間で簡便に知ることが可能になるという。これを実用化した際の適応としては、クリニックなどの医療機関・検疫での感染の有無の把握や、将来的には、海外からの渡航者の感染者のスクリーニングが想定される。

 この検査法を活用することで、迅速かつ簡便に、症状のない人を含めたSARS-CoV-2感染者の診断が行われるようになり、国内感染者動向をタイムリーに把握できるようになり、COVID-19の早期診断による重症化予防対策や、治療薬の早期投与が可能になると期待されている。

塩野義製薬
東京医科大学小児科・思春期科学
日本大学文理学部化学科

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