【新型コロナウイルス】肺炎を有するCOVID-19患者に対する「アビガン」「フサン」の特定臨床研究を開始 東京大学

2020.05.13
 東京大学医学部附属病院は、肺炎を発症している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者を対象に、「アビガン錠200mg」(一般名:ファビピラビル)と「注射用フサン50」(一般名:ナファモスタットメシル酸塩)の併用療法の特定臨床研究を開始した。

「アビガン」「フサン」の特定臨床研究 両剤併用による相加的な効果を期待

 「アビガン錠200mg」はRNAポリメラーゼを抑制することでSARS-CoV-2のヒトの細胞内での増殖を抑制すると考えられている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬候補として現在、国内で複数の特定臨床研究や観察研究の他、企業主導治験が進められている。

 「注射用フサン50」は抗凝固薬や膵炎治療薬として国内で使われてきた薬剤だが、東京大学医科学研究所の研究でウイルスのヒトの細胞への侵入を抑制することが発見された。現在、国内で観察研究が行われているが、国内主導での特定臨床研究や治験はまだ開始されていない。

 両剤はウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、両剤の併用により相加的な効果が得られることが期待される。また、COVID-19の一部の患者では血管内での病的な血液凝固が病気の悪化に関与していると考えられ、「注射用フサン50」の抗凝固作用が有効であると期待される。

 両剤の有効性、安全性が認められた場合には、患者の重症化の防止、入院期間の短縮に寄与することで、急増する患者の治療に貢献できると考えられる。

 同臨床研究は、「アビガン錠200mg」と「注射用フサン50」の併用群と、「アビガン錠200mg」単独群の2群で薬剤の作用を比較し、想定される有効性や安全性が認められるかを確認することを目的としている。

 「アビガン」は富士フイルム富山化学より、「フサン」は日医工よりそれぞれ無償提供される。両社から研究実施中に得られる双方の薬剤に関する安全性情報も提供される。

 「特定臨床研究」は、診療に携わる医師が主導し、医学的必要性・重要性に鑑みて、未承認や適応外の医薬品などを使用した臨床研究を立案・計画して行うもの。製薬会社が新薬の安全性・有効性を調べるために実施する「治験」とは異なる。

課題名 肺炎を有するCOVID-19(COVID-19)患者を対象としたファビピラビルとナファモスタットメシル酸塩の併用療法の有効性及び安全性を検討する多施設共同単盲検ランダム化比較試験(jRCTs031200026)
実施体制 <研究代表医師・研究責任医師>
森屋恭爾(東京大学医学部附属病院 感染制御部 教授)
<研究代表医師及び研究責任医師以外の研究を総括する者>
瀬戸泰之(東京大学医学部附属病院 病院長/胃・食道外科 教授)
<研究・開発計画支援担当責任者>
森豊隆志(東京大学医学部附属病院 臨床研究推進センター センター長/教授)
<試験調整委員会委員長>
宮園浩平(東京大学大学院 医学系研究科 教授)
<共同研究実施医療機関および責任医師>
東京大学医学部附属病院、東京大学医科学研究所附属病院、虎の門病院、東京医科歯科大学医学部附属病院など6施設で開始し、今後、順次参加施設が追加される予定

東京大学医学部附属病院

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